(Image Credit: Shione Fujita, Habitable Research Group, SGH Moriyama High School)
HD 209458 b(別名オシリス)は 1999 年に世界で初めてトランジット法による観測がなされた系外惑星です。ペガスス座V376 星を周回しており、古代エジプト神話に出てくる神オシリスにちなんで名付けられました。軌道が恒星から非常に近い「ホット・ジュピター」の一つで、表面温度が 1000℃ を超えていると考えられています。また、恒星の重力により常に一つの面を恒星に向けています。
(Image Credit: Ryusuke Kuroki, Yosuke Yamashiki & Natsuki Hosono)
HD 209458 b は初めて大気の存在が確認された系外惑星でもあります。惑星の大気を通過した恒星からの光を波長ごとに詳しく調べることで、惑星の大気を構成する分子の種類がわかります。それによると、HD 209458 b の大気の下層部にはナトリウム、上層部には水素や炭素を含む分子があることがわかりました。また、高温のため激しく放出される大気が彗星のように尾を引いていたり、鉱物でできた雲が浮かんでいたりと、HD 209458 b は私たちのよく知っている太陽系の惑星とは全く異なる特徴を持っていると考えられています。
このような系外惑星大気の特徴は、今の観測技術では「惑星の大気を通過した恒星からの光」を観測しなければわかりません。一度にたくさんの恒星を観測し自動的に解析できる点も考えれば、「トランジット法」が非常に強力な観測手法であることがわかります。
なお、HD 209458 b によるトランジットは、直径30cm程度の比較的小さな望遠鏡でも観測することができます。自分で観測したデータを解析し、実際に自分の手で系外惑星の存在を示す光度曲線を得ると、「系外惑星」という遠い宇宙の話が急に身近に感じられるでしょう。ぜひ皆さんも一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
(文責:芝池諭人)
(ExoKyoto Stellar Window を用いた HD 209458 b の天球上の位置)
HD 209458 b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/HD_209458_b.html