Kepler-16b は、白鳥座に位置する K 型星の Kepler-16A と M 型星の Kepler-16B の連星 Kepler-16(AB) の周りを回っており、恒星同士の連星を公転している「周連星惑星」として初めて発見された天体です。そのため、Kepler-16b の地表からは “太陽” が2つ見えることになります。また公転軌道は、明るい方の恒星である Kepler-16A のハビタブルゾーンの外側の縁あたりに位置しています。
Kepler-16b は、半径が地球の 8.5 倍、質量が地球の 105 倍と、サイズとしては太陽系の土星に近く、ガス惑星であると考えられます。Kepler-16b 上には地球のような生命体がいるとは考えにくいですが、仮にその周りに地球サイズの衛星が存在すると仮定すると、十分な大気を持てば生命体が発生する可能性はあると期待されます。
(クレジット:Shione Fujita & SGH Moriyama High School)
この仮想衛星から空を見上げると、Kepler-16b(土星のようなリング惑星)と、遠くに輝く2つの太陽(Kepler-16(AB))が見えることでしょう。太陽系には存在しない「ハビタブルムーン」上に生命が発生し、彼らは地球とは全く異なる風景を眺めているかもしれない、と考えるとなかなか興味深いものがありますね。
ちなみに、アメリカで行われた研究会において初めて Kepler-16b が発表されたとき、会場はスタンディングオベーションに包まれました。映画「スター・ウォーズ」に登場する、ルーク・スカイウォーカーの故郷タトゥイーン(Tatooine)が、ついに発見された!ということで、大盛り上がりになったのです。「SF に現実が追いついた」そんな素敵な瞬間でした。
周連星惑星はその後も次々と発見されており、単独星周りとは異なる惑星形成プロセスの可能性や、より複雑なハビタブルゾーンの計算など、様々な研究が精力的に行われているところです。宇宙には単独星よりも二重以上の連星の方が多く存在していると考えられており、周連星惑星の重要性は非常に大きいといえるでしょう。
(文責:藤田汐音・佐々木貴教)
(ExoKyoto Stellar Window 上での Kepler-16b)
Kepler-16b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-16_(AB)_b.html