月: 2016年12月

WASP-12b

<WASP-12bの想像図 credit: Haruka Inagaki, Habitable Research Group SHG Moriyama High School >

WASP-12bは、2008年に発見された、太陽系からおよそ1410光年のところにある系外惑星です。質量が木星の1.47倍、半径が木星の1.90倍の巨大ガス惑星ですが、主星であるぎょしゃ座WASP-12からわずか0.0229AU(約345万km)の位置にある「ホットジュピター」です。これまでに数多くのホットジュピターが発見されていますが、その多くは公転周期が2,3日程度であるのに対し、WASP-12bの公転周期は1.09日と、数あるホットジュピターの中でも特に「熱い」惑星と言えます。その一方で、可視光線の94%を吸収してしまう「暗い」惑星でもあります。

この惑星は潮汐ロック状態,つまり地球の月と同様に主星に対して常に同じ面を向けた状態になっています。表面温度は夜側が1500Kであるのに対して昼側は2800Kと非常に高温で、これは主星からの輻射だけでなく、潮汐力の影響を受けています。潮汐力は、地球と月の場合では潮を満ち引きとして観測されますが、WASP-12bの場合は主星と非常に近いため、惑星全体がラグビーボールのような形状に歪められるほど強力で、この強い潮汐力による潮汐加熱が高い表面温度の原因の一つになっています。

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<ExoKyotoを用いて表示したWASP-12bの予想温度と、今までに見つかった系外惑星の推定温度・主星の温度との比較図。*この図ではアルベドを0.3と仮定しているため、実際の温度(2580K)よりも若干低く見積もられている>

また、この潮汐加熱によって惑星内部の温度が上昇することで、惑星大気が木星半径の約3倍まで膨れ上がっており、Shu-Lin Li氏(北京大学)の、「惑星内部の潮汐加熱による惑星の膨張」(Li et al, 2010. Nature)の予言が証明されました。

WASP-12bの重力では、この大きく膨張した大気を留めておくことはできず、主星の重力によって惑星から大気が剥がされて主星に降着していることが、ハッブル宇宙望遠鏡のCosmic Origin Spectrograph(COS)によって観測されています。惑星から剥がされた毎秒60億トンもの質量は、主星の周りに円盤を作りながらゆっくりと降着しています。このように天体間で質量がやりとりされる現象は一般的に近接した連星系で見られていましたが、惑星で観測されたのは初めてです。

WASP-12bは、現在のペースで大気が剥がされていくと今からわずか1000万年以内にガスをすべて失ってしまうとも言われています。ただ人類の歴史に比べれば遥かに長い時間ですので、我々人類がその結末を見る事が出来るかは不明ですが…

(文責:山中陽裕・野津翔太・清水里香)

wasp-12b

<WASP-12bの想像図 credit: Ryusuke Kuroki, Yosuke Yamashiki, Natsuki Hosono>

WASP-12bについての詳しい情報はこちら

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/WASP-12_b.html

参考情報

NASA “Hubble Finds a Star Eating a Planet”

<https://www.nasa.gov/mission_pages/hubble/science/planet-eater.html> (2020/3/16)

HUBBLESITE “NASA’S HUBBLE CAPTURES BLISTERING PITCH-BLACK PLANET”

<https://hubblesite.org/contents/news-releases/2017/news-2017-38.html> (2020/3/16)

GJ504b

GJ504bの想像図 (Image Credit: Shione Fujita, Habitable Research Group, SGH Moriyama High School)

GJ504bは地球からおとめ座方向に約60光年のところに位置する惑星です。太陽型恒星GJ504から44天文単位の領域を公転周期約100年で周回しています。
その大きさが木星と似た木星型惑星であることから第二の木星とも呼ばれています。また、赤外線波長で17~20等というGJ504の60万分の1以下の見かけの明るさしかありません。

2013年にハワイ・マウナケア山にあるすばる望遠鏡が、GJ504bの直接撮像観測に成功しました。
観測には2009年に搭載された新型コロナグラフカメラ HiCIAOと、地球大気による星像の乱れを補正することで高解像度を達成する補償光学装置が使われました。
また、この惑星は日本の研究チーム(すばる望遠鏡 SEEDS プロジェクト)により発見された歴史的な惑星です。大気中の雲が少ないのが特徴で、近くで見るとピンク色に見えるとも言われています。

一般に直接撮像惑星観測では、惑星の質量は明るさと年齢に基づき進化モデルを介して推定されます。一般に直接撮像観測の場合、トランジットで発見された惑星の分布などとは異なり、若く明るい惑星の方がより多く発見されている傾向があります。しかし若い直接撮像惑星の進化モデルにはまだ不確定な所があり、推定される質量が用いたモデルによって大きく異なるという結果が出てしまいます。一方でGJ504bの場合、年齢が1-5億年前とそれなりに歳を重ねているため、従来よりも質量が精度よく求まり、より高い信頼度を持って木星型惑星である、と結論づけられています。

参考文献:Kuzuhara, M., et al. 2013, ApJ, 774, 11
http://adsabs.harvard.edu/abs/2013ApJ…774…11K

(文責・高木風香 野津翔太)

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GJ504bの詳しい情報は以下のリンク

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_504_b.html