(Ross-128bの想像図 Image Credit 稲垣遥 守山高校ハビタブル研究会)
(Ross-128bの想像図 Image Credit: Yosuke Yamashiki, Ryusuke Kuroki)
太陽系から11光年(3.4 パーセク)の彼方に新たなハビタブルな惑星が発見されました。質量は推計で地球の1.35倍(ExoKyotoでは推計値の1.31を用いている)、トランジットをしていないため正確な半径がわかりませんが、ExoKyotoに内装されている質量推定モジュール(Weiss & Marcy, 2014)によると、半径は地球の1.078倍と推計されます。主星はおとめ座のM型星で、星の推定温度は3192 K, 質量は太陽の0.16 倍の小さなM型星です。ハビタブルプラネットとしては、Proxima Cen bに次いで二番目に地球から近いということになります。フランス、グルノーブル・アルプ大学の研究チームがチリにある欧州南天天文台(ESC)の直径3.6メートル望遠鏡と高精度視線速度系外惑星探査装置HARPS*を用いて発見しました。恒星Ross128の周りを1周9.9日で回っています。惑星の黒体温度はBonfils et al. 2017 によると地球アルベドで269 K (ExoKyotoでは281 K), 金星アルベドで213 Kとなり、ハビタブルと判定可能です(地球の黒体温度は255 K)。
プロキシマ・ケンタウリは若い恒星で強烈なフレアを発生させるので、Proxima Cen bは生命が存在するには困難ではないかと考えられています。一方、恒星Ross128は赤色矮星で、薄暗く、自転周期が120日以上と見積もられており、それにともなって活動が穏やかで、スーパーフレアを頻繁に発生させないだろうと考えられています。そのため、大気の状態にもよりますが、液体の水が存在し、生命が存在する可能性もあるのではないかと考えられています。
2024年に完成予定の巨大望遠鏡ELTでの観測が始まれば、惑星の大気の組成なども調べられるようになると期待されています。
(坂東日菜・山敷庸亮)
詳しい情報は以下のデータベースページへ
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Ross_128_bJP.html
*HARPS ヨーロッパ南天天文台 (ESO)のチリのラ・シヤ天文台にある3.6m望遠鏡に設置された分光器で、視線速度法で太陽系外惑星の観測を行い、今まで130個以上の太陽系外惑星を発見している。トランジットしない惑星の発見と、質量の計測が可能。人類が始めて太陽系外惑星を発見したときに用いられたELODIEの改良型の第二世代の視線速度法探査装置で、ミシェルマイヨールらにより装置のスペックが決定され、人の歩く速度(3.5 km/h (0.97 m/s) )のトランジットの観測が可能である(有効精度としては30 cm/s)。そのため、恒星のまわりを公転する質量の小さい地球型惑星の視線速度法による観測が可能となる。
X. Bonfils et al. 2017. A temperate exo-Earth around a quiet M dwarf at 3.4 parsecs. Astronomy & Astrophysics manuscript © ESO
Ross 128 b (Proxima Vir b) の想像図 *潮汐ロックされていないと仮定
Ross 128 b (Proxima Vir b) のハビタブルゾーン(太陽系相当天文単位SEAU)と公転軌道
Ross 128 b (Proxima Vir b) のハビタブルゾーン(Kopparapu et al.)と公転軌道
ExoKyotoでは、Ross 128 bは地球型惑星のハビタブルゾーン限界のやや内側に計算されています。
Ross 128 b (Proxima Vir b) のハビタブルゾーン(Kopparapu Original)と公転軌道
ExoKyotoでは、Ross 128 bは地球型惑星のハビタブルゾーン限界のやや内側に計算されています。
Ross 128 b (Proxima Vir b) の大きさの比較
Ross 128 b (Proxima Vir b) のStellar Window上での位置
Ross 128 b (Proxima Vir b) のStellar Window上での位置