AB Aur b は、太陽系から 469.7 光年( パーセク)離れた恒星AB Aur を周回する系外惑星で 2008 年に公開されました.
恒星 AB Aur は視等級 7.1, 絶対等級 1.3 です.
この恒星は太陽の 2.4 倍の質量で、 半径は太陽の1.7 倍であり 表面温度は 9600 で、スペクトル型は A0Vです。
史上初:惑星の赤ちゃんを直接撮像。現在も成長し続ける原始惑星。
日本語表記は「ぎょしゃ座AB星b」。誕生から200万年程度しか経っていないとされる若い星(Ae/Be型星)であるぎょしゃ座AB星のガス円盤内に存在する原始惑星。地球から約508光年離れており、恒星(ぎょしゃ座AB星)から約93天文単位も離れた位置を公転している。質量は木星の9~12倍、半径のは木星の約2.75倍と予測されている。
2022年、国立天文台ハワイ観測所のThayne Currie氏を筆頭とする研究グループは、すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡を使って今まさに成長しつつある原始惑星の直接撮像の成功を発表した。未だ惑星が形成される材料となるガスと塵の中に存在している原始惑星が撮像によって発見されたのは史上初とされている。
また、一般的な原始惑星系円盤の中で塵が少しずつ集まって惑星に成長していく「コア集積モデル」に対して、恒星から50天文単位を超える距離において原始惑星系円盤の一部が自身の重力で分裂・収縮して比較的速やかに惑星が形成されるという「円盤自己重力不安定モデル」と呼ばれる別のプロセスが提唱され、惑星形成に関する理論に重要な知見をもたらした。
すばる望遠鏡の SCExAO (スケックスエーオー) と CHARIS (カリス) は系外惑星や恒星まわりの円盤を観測するための最新鋭装置で、両者を組み合わせることで高いコントラストで天体を撮像し、同時にそのスペクトルを観測することが可能である。SCExAOはシャープな星像を作る極限的な補償光学系、CHARIS は天空の微小な面の各点のスペクトルを一度に取得できる面分光の機能を持つ。
この惑星は2016年に最初に検出されたが、新しく形成された惑星ではなく「ぎょしゃ座AB星」の原始惑星系円盤の一部を識別したとされていた。しかし、その後のすばる望遠鏡で得られたSCExAO/CHARISデータは、ぎょしゃ座AB星bのスペクトルが原始惑星系円盤のスペクトルとは異なり、温度が新しく生まれた惑星の予測値と類似していることを示したため、ぎょしゃ座AB星bがぎょしゃ座AB星の周囲を公転しており、背景にある恒星などではないという証拠が確認された。
Currie, T., Lawson, K., Schneider, G. et al. Images of embedded Jovian planet formation at a wide separation around AB Aurigae. Nat Astron 6, 751–759 (2022). https://doi.org/10.1038/s41550-022-01634-x
天文学:木星型の太陽系外惑星の形成過程が観測された | Nature Astronomy | Nature Portfolio (natureasia.com)
Hurley, Timothy (April 9, 2022). “Mauna Kea scientists discover emerging planet”. Honolulu Star-Advertiser.
(文責:小川)
AB Aurigae b の詳細な情報はこちら