LP 791-18 d は、太陽系から 86.4 光年( パーセク)離れた恒星LP 791-18 を周回する系外惑星で 2023 年に公開されました。恒星 LP 791-18 は視等級 16.9, 絶対等級 14.8 です。この恒星は太陽の 0.1 倍の質量で、 半径は太陽の0.2 倍であり 表面温度は 2960 で、スペクトル型は M6Vです。
地球とほぼ同じサイズ感の惑星。しかも火山活動と大気がある可能性あり!?
地球サイズの系外惑星LP 791-18 dは、太陽系からおよそ90光年離れたコップ座の方向にある、赤色矮星LP 791-18の惑星である。この恒星系にはこれまで、惑星bとcが見つかっている。 新たな惑星dは、惑星bとcの間の軌道に位置しており、恒星の周りを公転周期2.75日で公転している。半径はおよそ1.03地球半径と推定され、半径は地球ととてもよく似ている。また惑星dの質量は地球と同程度である。惑星bは地球の約1.2倍の半径で公転周期は約0.94日、惑星cは地球の約2.5倍の半径で質量が地球の9倍程度、公転周期は約4.99日の惑星である。
惑星dはハビタブルゾーン(生命居住可能領域)の内側境界付近にあり、大気を保持する可能性があるため、生命誕生の起源を探る研究にとって、興味深い惑星として注目されている。この惑星は、外側の隣接する軌道を公転する、大きくて重い惑星cからの引力を受けて公転軌道が、わずかに楕円形になっている。この楕円形の軌道を公転する中で、惑星dには恒星からの潮汐力が働き、わずかに変形する。そのことにより、太陽系で最も活発な火山活動を示す、木星の衛星イオの加熱メカニズムと同じように、惑星内部の摩擦を生み、惑星を加熱し、惑星表面で活発な火山活動を起こしている可能性がある。今後の惑星大気の観測によって、地殻活動が惑星大気に、どのような影響を及ぼすかについて、重要な発見をもたらす可能性がある。
惑星dは、地球の月と同じように、潮汐力により自転周期と公転周期が一致しており、常に恒星LP 791-18に同じ面を向けているため、昼側は300–400 Kと高温で、水は蒸発してしまっている可能性が高い。ただし一方、夜側は十分に冷えていると考えられるので、火山活動が起こっていれば、惑星dに大気が存在し、夜側の面では大気中で水蒸気が凝集し、液体の水が存在している可能性がある。
また、惑星dの活発な火山活動は、本来惑星の地殻内部に閉じ込められてしまうはずの物質を、大気中に送り込む役割を果たしている可能性がある。そういった物質の中には、生命にとって重要である炭素なども含まれる。この惑星の大気組成の検出が実現できれば、惑星の地殻活動が惑星大気に及ぼす影響を、深く調べることが可能になるであろう。これは生命の起源の研究につながる可能性があり、「アストロバイオロジー(宇宙生物学)」の観点からも重要である。
本研究成果は、2023年5月17日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature」に掲載された。東京大学大学院総合文化研究科の成田憲保教授(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター客員教授)、福井暁彦特任助教、森万由子特任研究員らが参加する国際研究チームにより、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のトランジット惑星探索衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡、及び東京大学とアストロバイオロジーセンターの研究者が開発した、多色同時撮像カメラMuSCAT、MuSCAT2を含めた多数の地上望遠鏡等が連携した観測により、発見された。
〈参照〉論文情報
・東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部:火山活動の可能性がある地球サイズの惑星を発見 ー 潮汐力により加熱された系外惑星 LP 791-18d
・Spitzer Space Telescope:NASA’s Spitzer, TESS Find Potentially Volcano-Covered Earth-Size World
・IAC:Astronomers find Earth-sized world potentially covered in volcanoes
・Nature:A temperate Earth-sized planet with tidal heating transiting an M6 star 論文: 2023年5月17日
(文責:日置)
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