Gliese 12b
Gliese 12 bは地球の0.96倍(Exokyotoでは1.03倍)の半径であり、おおよそ1.57倍の質量を持つ太陽系外惑星であり、M型矮星であるGliese 12 (TOI-6251) の0.066AUの近距離を12.76日周期で公転しています。2024年にNASAのTESS宇宙望遠鏡によって太陽系外惑星候補として発見され、スペイン・テネリフェ島のテイデ観測所にある1.52m望遠鏡(カルロス・サンチェス望遠鏡)に搭載されている多色撮像カメラMuSCAT2と、ハワイ州・マウイ島のハレアカラ観測所にある2m望遠鏡に搭載されている多色撮像カメラMuSCAT3を用いたトランジット法による観測によって確定されました。
左:Tessトランジット解析、右:MuSCAT3/MuSCAT2のトランジット解析
Credits: https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ad3642
主星 Gliese 12 のハビタブルゾーンは内側境界(金星相当放射を受ける軌道半径)の0.062 AUから外側境界(火星相当放射を受ける軌道半径)の0.130 AUと考えられており、Gliese 12 b の公転軌道である0.07AUは太陽系相当で金星の軌道に近いハビタブルゾーンに位置しています。ただし、惑星境界での放射は2,281 W/m2で、地球(1367 W/m2)と金星(2612 W/m2)の間にあると考えられるため、若い頃の金星のように、海洋が干上がる前の金星のような状態である可能性もあります。
Gliese 12 bの位置
Gliese 12 b の公転軌道
太陽系との比較図
Credits: ExoKyoto(https://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Gliese_12_bJP.html)
さらに、ハワイ観測所にある主鏡が口径8.2メートルの世界最大級の望遠鏡(すばる望遠鏡)による近赤外線観測、およびESAのX線天文衛星 XMM-NewtonによるX線観測の結果から、この惑星の表面温度はアルベドをゼロと仮定すると約42℃、アルベドを0.3と仮定すると約15℃になりますが、大気が存在し温室効果がある場合もっと温度が高くなるはずです。主星 Gliese 12は極紫外線成分が大きくなく、すなわち恒星活動が低いことが示されており、これによって頻繁なフレアは発生しにくい可能性と、惑星大気が残っていることが示唆されています。Gliese 12 bがハビタブルな環境であるかは、今後のJWSTによる惑星大気成分の観測結果を待つ必要があります。
恒星はそのスペクトルの特徴に応じてアルファベット1文字でO、B、A、F、G、K、Mに分類され(ハーバード分類)、Oが最も表面温度が高くMが最も低いと定義されています。私たちの住む地球の恒星である太陽はG型星です。この宇宙における恒星の存在割合はM型が最も多く約76%を占めると考えられており、表面温度とは逆の順番でO型星が最も少ないです。表面温度の低いM 型星の主星におけるハビタブルな環境は、Gliese 12 bのように主星からの距離が近く、公転周期も短いと考えられます。このことが原因で、フレアなどの主星の影響をより受けやすい環境にありますが、Gliese 12のように(磁場)活動性がそれほど高くない状態の主星は、ハビタブルな環境であり生物が生息していることが期待されます。JWSTなどによる今後の詳細な観測が楽しみな惑星です。
(文責:小塚・山敷)