投稿者: exoplanetkyo

Kepler-1638 b

Kepler-1638b は NASAのKepler宇宙望遠鏡が発見した1284個(2016年公表)の系外惑星のひとつです。Kepler 宇宙望遠鏡はトランジットとよばれる手法を用いて系外惑星を探していますが,この方法で惑星を発見した場合,その惑星のサイズを推定することができます(詳しくはこちら→http://www.exoplanetkyoto.org/study/method/)。Kepler-1638b の半径は地球の1.87倍(Molton et al. 2016),また,軌道長半径(主星であるKepler-1638と惑星であるKepler-1638bの距離)は0.745 AUと推定されています(Torres et al. 2016)。これらのことから,サイズと軌道長半径に注目すると,Kepler-1638bは地球とよく似た惑星であると話題になりました。

主星であるKepler-1638も太陽とよく似た恒星であると考えられています。半径は太陽の0.95倍,質量は太陽の0.97倍,そして温度は5710 Kで,太陽の表面温度5772 Kとほぼ等しい値になっています。主星であるKepler-1638も太陽に似ているだなんて,ますますKepler-1638 b が地球のように生命を育む惑星である気がしてきますよね。Kepler-1638に大気や磁場はあるのでしょうか。それらは地球と同じような描像をもっているのでしょうか,それとも私達のまだ知らない自然現象が隠れているのでしょうか。Kepler-1638bがどこまで地球と似た惑星で,さらには生命が存在できるような環境であるか,さらなる検討が待たれます。

Kepler-1638 b について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-1638_bJP.html

GJ163c

GJ163cは、地球からかじき座方向に約49光年離れた恒星GJ163の周りを周回する系外惑星で、2012年にヨーロッパ南天天文台(ESO)の高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)により発見された。恒星GJ163は、太陽の0.4倍の質量をもち、表面温度3500K、スペクトル型M3.5の赤色矮星である。絶対等級は10.9、視等級は11.8で太陽よりも暗く、年齢は10~100億年程度である。これまでにGJ163には5つの惑星(GJ163b、GJ163c、GJ163d、GJ163e、GJ163f(e,fはさらなるデータが必要とされる))が発見されている。その中でも特にGJ163cは生命が生存する可能性があると注目されている。

GJ163惑星系

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_163JP.html

 

GJ163cは、地球の6.9倍の質量を持つスーパーアースで、中心星のハビタブルゾーンに位置し、恒星GJ163周りを公転周期25.6日、軌道長半径0.125天文単位で公転している。スーパーアースとは地球の2~10倍の質量をもち、岩石と水で構成されていると考えられる惑星のことである。GJ163cが岩石や水で構成されている場合、その大きさは地球半径の1.8~2.4倍と推定されている。またこの惑星は地球が太陽から受けるエネルギー(1,368 W/m2)よりも約30%多くのエネルギー(1,909 W/m2)を恒星から受けており、大気組成が地球と同様であると仮定すると、その表面温度は約60℃と推定され、地球よりもやや高温になっている。地球上の多くの植物や動物は、この温度での生存は難しいが、微生物の中には高温でも生存できるものもいるため、GJ163cでは生命が生存している可能性があると考えられている。

GJ163cも含め、赤色矮星周りの居住可能性については様々な議論がされている。例えば、赤色矮星のハビタブルゾーンに位置する惑星は恒星に近いところを公転しており、潮汐ロックされている可能性がある。潮汐ロックというのは、2つの天体(例えば恒星と惑星)が近いとき、相手の重力によって生じる潮汐力の作用により、天体の自転角速度と公転角速度が一致して、相手の天体に対して常に同じ面を向ける状態のことである。惑星が潮汐ロックされているとき、常に恒星に向いている面は極めて高温になり、反対の面は極寒になるため、境界領域(ターミネーターと呼ぶ)以外は生命の生存に適していない可能性がある。

また、赤色矮星は太陽型星に比べ、活動が活発で紫外線やX線が多く放出されていて、赤色矮星のハビタブルゾーンに位置する惑星は恒星からの距離も近いため、恒星からより強い放射線を受けて大気が剥ぎ取られている可能性もある。ExoKyotoによる推定では、地球程度の大気圧が維持されている場合は表面は危機的な放射線濃度にはならないが、剥離されている場合は生命に危険なレベルになりうる。

その一方で、地球型惑星(岩石惑星)は地球のように大気を守る磁場などの要素を持っている可能性があり、赤色矮星系のスーパーアースであるGJ163cのような惑星の居住可能性についてはさらなる研究が期待される。

(文責・中村)

 

GJ 163 c について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_163_cJP.html

GJ163惑星系
GJ163惑星系の惑星

(参考)

“The HARPS search for southern extra-solar planets. XXXIV. A planetary system around the nearby M dwarf GJ163, with a super-Earth possibly in the habitable zone”

<https://arxiv.org/abs/1306.0904v1>

“Up to four planets around the M dwarf GJ 163 Sensitivity of Bayesian planet detection criteria to prior choice”

<https://arxiv.org/abs/1306.1717v1>

“A Hot Potential Habitable Exoplanet around Gliese 163”

<http://phl.upr.edu/press-releases/ahotpotentialhabitableexoplanetaroundgliese163>

“The HARPS search for southern extra-solar planets XXXV. Super-Earths around the M-dwarf neighbors Gl433 and Gl667C”

<https://arxiv.org/abs/1202.2467>

GJ 180 c

GJ 180 c は、恒星GJ 180 を周回する系外惑星で 2014 年に公開された. 恒星 GJ 180 は視等級 10.9, 絶対等級 25.0 である. この恒星は太陽の 0.4 倍の質量で、 半径は太陽の0.4 倍であり 表面温度は 3371 ケルビンで、スペクトル型は M2Vである。 この恒星の惑星系で GJ 180 c は、恒星 GJ 180 のまわりを 公転周期24.3 日で、 軌道長半径 0.13 天文単位 ( 19,298,125.3 km)で公転している。

GJ 180 c について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_180_cJP.html

GJ 273 b

GJ 273 b は、太陽系から 12.4 光年( 3.80パーセク)離れた恒星GJ 273 を周回する系外惑星で 2017 年に公開された. 恒星 GJ 273 は視等級 9.9, 絶対等級 12.0 である. この恒星は太陽の 0.3 倍の質量で、 半径は太陽の0.3 倍であり 表面温度は 3382 ケルビンで、スペクトル型は M3.5である。 

この恒星の惑星系で GJ 273 b は、恒星 GJ 273 のまわりを 公転周期18.6 日で、軌道長半径 0.09 天文単位 ( 13,628,515.6 km)で公転している。

GJ273は又の名をルイテン星といい、こいぬ座方向に見える、地球から12.4光年離れた赤色矮星です。赤色矮星は非常に暗くて小さな恒星で、少ない燃料をゆっくり消費してゆるやかに核融合反応を行なっています。GJ273の半径、質量はともに太陽の0.3倍ほどと小さく、表面温度は約3000℃で、太陽の表面温度6000℃と比べて低温です。
GJ273のスペクトルをHARPS分光器で2003年から14年間にわたって観測したところ、惑星を2つ持つことが発見されました。これらの惑星のうち、外側を回るものがGJ273bです。GJ273bは公転周期が約19日、質量は地球の約3倍です。GJ273bは主星から0.09AUの距離を公転しています。(太陽と地球の間の距離を1AUといいます。)GJ273の大きさや温度から計算すると、GJ273bには液体の水が存在する可能性があり、生命が存在するかもしれません。
GJ273bは現在見つかっている中では、プロキシマbに次いで二番目に地球から近いハビタブル惑星です。地球との電波交信にかかる時間はたった25年と短い(?)ので、地球の音楽を送信するプロジェクト“Sónar Calling GJ273b”が現在進行しています。2017年10月にノルウェーにあるEISCAT科学協会のアンテナから発信された音楽の信号は、2030年3月11日にGJ273bに到達する見込みです。もしGJ273bに住む知的生物が、地球からの電波をキャッチして音楽を楽しんでくれたら嬉しいですね。

(文責 大山航 木村なみ)

 


参考文献

(1)The HARPS search for southern extra-solar planets XLI. A dozen planets around the M dwarfs GJ3138, GJ3323, GJ273, GJ268, and GJ3293
N. Astudillo-Defru1,2, T. Forveille2, X. Bonfils2, D.S'egransan1, F.Bouchy1, X. Delfosse2, C Lovis1, M. Mayor1, F. Murgas2, F. Pepel1, N.C. Santos3,4 S Udry1, A.Wunsche2
(2) http://phl.upr.edu/projects/habitable-exoplanets-catalog
(3) exokyoto
(4) https://www.sonarcalling.com/en/

GJ 273 b について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_273_bJP.html

GJ 422 b

GJ 422 b は、恒星GJ 422 を周回する系外惑星で 2014 年に公開された. 恒星 GJ 422 は視等級 11.5, 絶対等級 25.0 である. この恒星は太陽の 0.3 倍の質量で、 半径は太陽の0.4 倍であり 表面温度は 3323 ケルビンで、スペクトル型は M3.5Vである。この恒星の惑星系で GJ 422 b は、恒星 GJ 422 のまわりを 公転周期26.2 日で、 軌道長半径 0.12 天文単位 ( 17,802,146.6 km)で公転している。

 

GJ 422 b について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_422_bJP.html

GJ 832 c

GJ 832 c は、太陽系から 16.1 光年( 4.94 パーセク)離れた恒星GJ 832 を周回する系外惑星で 2014 年に公開された. 恒星 GJ 832 は視等級 8.7, 絶対等級 10.2 である. この恒星は太陽の 0.5 倍の質量で、 半径は太陽の0.4 倍であり 表面温度は 3300 ケルビンで、スペクトル型は M9である。この恒星の惑星系で GJ 832 c は、恒星 GJ 832 のまわりを 公転周期35.7 日で、 軌道長半径 0.16 天文単位 ( 24,234,855.1 km)で公転している。

GJ 832 cは、2014年に視線測度法によって発見されたスーパーアース型の太陽系外惑星です。中心星であるGJ 832から0.163AUの距離を周期35.68日で公転しており、質量は木星の0.017倍(地球の5.4倍)であると考えられています。Exokyotoによる推定半径は地球の1.5倍です。GJ 832は地球から4.94パーセク(16光年)の距離にある質量が太陽の0.45倍、表面温度が3590Kの赤色矮星(M型星)で、現在その恒星系にはGJ 832cを含め二つの惑星が確認されています。

GJ 832 cはハビタブルゾーン内の内側の境界線近くに存在すると考えられており、液体の水が存在する可能性が指摘される生物が存在できるハビタブル惑星の一つです。ただし、潮汐ロック(公転周期と自転周期が同期してずっと同じ面を中心星に向けている状態)になっていたり、地球の5.4倍という大きな質量を持っているため厚い大気を伴っている可能性がありその場合温室効果が強くなってしまう事が考えられたりするなど、いくつかGJ 832cがハビタブルでない可能性があります。ただし、潮汐ロックに関しては潮汐ロックでありかつハビタブルである事が可能ではないかという議論も存在します。また、GJ832cが大きな衛星を伴っており、GJ832c自身ではなくその衛星がハビタブルである可能性も議論されています。
文責:大山

参考
1)”GJ832c”.EXOKYOTO.http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_832_cJP.html

2)“The Extrasolar Planet Encyclopaedia – GJ832c”.
Exoplanet.eu. http://exoplanet.eu/catalog/gj_832_c/

3) Wittenmyer, R. A.; et al. (August 2014). “GJ 832c: A super-earth in the habitable zone”. The Astrophysical Journal.
https://arxiv.org/pdf/1406.5587.pdf

4) TILIPMAN D., VIEYTES M., LINSKY J., BUCCINO A. & FRANCE K.(December 2020).
 “Semiempirical Modeling of the Atmospheres of the M Dwarf Exoplanet Hosts GJ 832 and GJ 581”.
 The Astrophysical Journal.
https://arxiv.org/pdf/2012.11738.pdf

GJ 832 c について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_832_cJP.html