Proxima Centauri d

Proxima Centauri d

Proxima Centauri d は、太陽系から 4.2 光年( パーセク)離れた恒星Proxima Centauri を周回する系外惑星で 2020 年に公開されました.
恒星 Proxima Centauri は視等級 11.1, 絶対等級 15.6 です.
この恒星は太陽の 0.1 倍の質量で、 半径は太陽の0.1 倍であり 表面温度は 3050 で、スペクトル型は M5.5Vです。
この恒星の惑星系で Proxima Centauri d は、恒星 Proxima Centauri のまわりを 公転周期5.2 日で、 軌道長半径 0.03 天文単位 ( 4315898.6 km)で公転しています。

Proxima Centauri dは、地球から約4.2光年先にあり太陽から最も近い恒星とされるProxima Centauriの周りを公転する太陽系外惑星だ。公転周期は約5.17日と短く中心星の近くを公転しているが、中心星であるProxima CentauriはM型矮星で温度が低いためProxima Centauri dの黒体温度(アルベドを0.3と仮定)は約297Kと液体の水が存在できる温度に計算されており、ハビタブルゾーン内に位置する。

2022年2月にヨーロッパ南天天文台より正式にProxima Centauri d発見の報告がなされた。これまでProxima Centauriの周りには他に二つの惑星が確認されており、恒星系としては注目されていたのだがこの惑星の発見報告には至っていなかった。今回発見に用いた視線速度法(ドップラー分光法とも言う)という観測方法は、中心星が惑星の質量に影響されて惑星の公転時に生まれるわずかな揺れを利用し、惑星の情報を得るというものである。しかしProxima Centauri dは地球の4分の1程度の質量しかなく、恒星に与える影響は小さい。発表によると、Proxima Centauri dによる視線方向の移動速度は秒速約40cmしかなかったということだ。これまで以上に精度が求められる観測だったのは間違いないだろう。実際、存在可能性が示唆されてから発見報告まで約2年の月日を要している。
これほどまでに小さな惑星を発見できたことは大きい。Proxima Centauri dを筆頭にこれまで発見しきれなかったハビタブル惑星が続々と見つかるかもしれない。

(文責:名取)

TOI-2285 b

TOI-2285 b は、太陽系から 138.3 光年( パーセク)離れた恒星TOI-2285 を周回する系外惑星で 2021 年に公開されました.
恒星 TOI-2285 は視等級 13.4, 絶対等級 10.3 です.
この恒星は太陽の 0.5 倍の質量で、 半径は太陽の0.5 倍であり 表面温度は 3491 で、スペクトル型は M4です。
この恒星の惑星系で TOI-2285 b は、恒星 TOI-2285 のまわりを 公転周期27.3 日で、 軌道長半径 0.14 天文単位 ( 20390189.8 km)で公転しています。

 

TOI-2285bTESSによるトランジット法で検出された東京大学および自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターを始めとするチームが発見した。 

公転周期は27.3日で半径は地球の1.73倍、質量は地球の19.52倍のスーパーアースで中心の恒星TOI-2285から約0.14天文単位のところで公転している。地球より僅かに大きいが、今まで発見されてきた系外惑星の中では小さいほうである。 

 

 恒星TOI-2285の表面温度は約3500Kでの赤色矮星である。太陽と比べて、半径が0.5倍、質量も0.5倍と小さい。 

  

TOI-2285bは液体の水の層が存在するのではないかと注目を集めている。薄い大気のが岩石惑星ならば水はすぐに蒸発してしまうが、東京大学の天文学者福井明彦博士は「岩石惑星はハビタブルゾーンの外に存在するとしても、水素雰囲気下で液体の水を保持する可能性がある」という。  

主星が明るいので詳細な観測が可能なため、さらなる解明が進むことが考えられる。 

惑星の内部の詳しい情報、水の存在の確認が期待される。  

(文責:石原 一真)

 
 
参考文献:
 
 
 
 
 

この惑星の詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/TOI-2285_bJP.html

AB Aurigae b

AB Aur b は、太陽系から 469.7 光年( パーセク)離れた恒星AB Aur を周回する系外惑星で 2008 年に公開されました.
恒星 AB Aur は視等級 7.1, 絶対等級 1.3 です.
この恒星は太陽の 2.4 倍の質量で、 半径は太陽の1.7 倍であり 表面温度は 9600 で、スペクトル型は A0Vです。

 

史上初:惑星の赤ちゃんを直接撮像。現在も成長し続ける原始惑星。

日本語表記は「ぎょしゃ座AB星b」。誕生から200万年程度しか経っていないとされる若い星(Ae/Be型星)であるぎょしゃ座AB星のガス円盤内に存在する原始惑星。地球から約508光年離れており、恒星(ぎょしゃ座AB星)から約93天文単位も離れた位置を公転している。質量は木星の9~12倍、半径のは木星の約2.75倍と予測されている。

2022年、国立天文台ハワイ観測所のThayne Currie氏を筆頭とする研究グループは、すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡を使って今まさに成長しつつある原始惑星の直接撮像の成功を発表した。未だ惑星が形成される材料となるガスと塵の中に存在している原始惑星が撮像によって発見されたのは史上初とされている。
また、一般的な原始惑星系円盤の中で塵が少しずつ集まって惑星に成長していく「コア集積モデル」に対して、恒星から50天文単位を超える距離において原始惑星系円盤の一部が自身の重力で分裂・収縮して比較的速やかに惑星が形成されるという「円盤自己重力不安定モデル」と呼ばれる別のプロセスが提唱され、惑星形成に関する理論に重要な知見をもたらした。
すばる望遠鏡の SCExAO (スケックスエーオー) と CHARIS (カリス) は系外惑星や恒星まわりの円盤を観測するための最新鋭装置で、両者を組み合わせることで高いコントラストで天体を撮像し、同時にそのスペクトルを観測することが可能である。SCExAOはシャープな星像を作る極限的な補償光学系、CHARIS は天空の微小な面の各点のスペクトルを一度に取得できる面分光の機能を持つ。
この惑星は2016年に最初に検出されたが、新しく形成された惑星ではなく「ぎょしゃ座AB星」の原始惑星系円盤の一部を識別したとされていた。しかし、その後のすばる望遠鏡で得られたSCExAO/CHARISデータは、ぎょしゃ座AB星bのスペクトルが原始惑星系円盤のスペクトルとは異なり、温度が新しく生まれた惑星の予測値と類似していることを示したため、ぎょしゃ座AB星bがぎょしゃ座AB星の周囲を公転しており、背景にある恒星などではないという証拠が確認された。

Currie, T., Lawson, K., Schneider, G. et al. Images of embedded Jovian planet formation at a wide separation around AB Aurigae. Nat Astron 6, 751–759 (2022). https://doi.org/10.1038/s41550-022-01634-x
天文学:木星型の太陽系外惑星の形成過程が観測された | Nature Astronomy | Nature Portfolio (natureasia.com)
Hurley, Timothy (April 9, 2022). “Mauna Kea scientists discover emerging planet”. Honolulu Star-Advertiser.

(文責:小川)

Imaginary picture of AB Aurigae b (illastrated by Yui Nagato)

Imaginary picture of AB Aurigae b (Illustrated by Yui Nagato)
Imaginary Picture of AB Aurigae b

AB Aurigae b の詳細な情報はこちら

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/AB_Aur_bJP.html

TOI-2109 b

TOI-2109 b は、太陽系から 861.1 光年( パーセク)離れた恒星TOI-2109 を周回する系外惑星で 2021 年に公開されました.
恒星 TOI-2109 は視等級 10.0, 絶対等級 2.9 です.
この恒星は太陽の 1.4 倍の質量で、 半径は太陽の1.7 倍であり 表面温度は 6500 で、スペクトル型は F0です。
この恒星の惑星系で TOI-2109 b は、恒星 TOI-2109 のまわりを 公転周期0.7 日で、 軌道長半径 0.02 天文単位 ( 2541783.2 km)で公転しています

 

公転周期がわずか16時間。いつか消滅する?観測史上2番目に熱いホット・ジュピター(2022年現在)。

2021年にIan Wongを筆頭とする研究グループにより発見が公表された。
ヘルクレス座の方向におよそ855光年先に存在する木星より一回り大きい巨大ガス惑星であり、F型恒星TOI-2109の周囲を公転している。質量は木星の5.02倍、半径は木星の1.35倍で、恒星との距離が近くて表面温度が高温である「ホット・ジュピター」に分類される。
恒星であるTOI-2109からの距離が約240万km(太陽と地球の距離はおよそ1億5000万km)と極めて近くて、公転周期(地球における1年)がわずか約16時間しかないことが特徴的。

恒星のTOI-2109は太陽よりも一回り大きい表面温度の高いF型星であることから、距離の近いTOI-2109 bの昼側の表面温度は摂氏およそ3330度と推定され、同じくホット・ジュピターであるKELT-9 b(摂氏約4300度)に次いで系外惑星の観測史上2番目に高いとされている。
TOI-2109 bの軌道はいずれ主星TOI-2109への落下が予想され、1000万年後にこの惑星は存在しないかもしれないと語られている。

※恒星の名前にあるTOIとはTess Objects of Interest の頭文字で、太陽系外惑星探索衛星TESSの観測により惑星が存在する可能性が示された天体のカタログを意味している。TOIカタログにリストアップされた天体は、ドップラー分光法や直接撮像法などの、トランジット法以外の観測方法によって追加観測が実施される。

TOI-2109: An Ultrahot Gas Giant on a 16 hr OrbitIan Wong et al 2021 AJ 162 256

TOI-2109: An Ultrahot Gas Giant on a 16 hr Orbit (iop.org)

Ultrahot Gas Giant Found Circling TOI-2109 | Sci-News.com

(文責:小川)

HD 260655 b

Imaginary Picture of HD 260655 b

HD 260655 b は、太陽系から 32.6 光年( パーセク)離れた恒星HD 260655 を周回する系外惑星で 2022 年に公開されました.
恒星 HD 260655 は視等級 9.8, 絶対等級 9.8 です.
この恒星は太陽の 0.4 倍の質量で、 半径は太陽の0.4 倍であり 表面温度は 3803 で、スペクトル型は MOVです。
この恒星の惑星系で HD 260655 b は、恒星 HD 260655 のまわりを 公転周期2.8 日で、 軌道長半径 0.03 天文単位 ( 4387705.5 km)で公転しています。

HD 260655 bは、質量が地球の約2.14倍、半径が地球の約1.24倍のスーパーアースです。主星HD 260655(M型星、赤色矮星)から約0.03AUのところを約2.77日かけて公転します。HD 260655 bの黒体温度は推定約649Kで、熱すぎるため生命が存在する可能性は低いと考えられています。

主星HD 260655(M型星)の周りにはもう一つHD 260655 cという岩石惑星が公転していますが、2つともTESS missionの中でトランジット法により発見されました。また、HIRESとCARMENESによる観測も行われ、そのときは視線速度法によって分析されました。

HD 260655は太陽系からの距離が約10 pc(約32.6光年)と比較的近いところにあり、複数惑星を持つと知られている赤色矮星の中で、HD 219134(約21.3光年)、LTT 1445 A(約22.5光年)、AU Mic(約31.9光年)に続き4番目に近いものになっています。しかも赤色矮星の中でも、AU Mic(J = 5.436mag)に続き2番目に明るい (J = 6.7 mag)星です。主星が近くてかつ明るいため、HD 260655 b、HD 260655 cは大気の観測に最適だと考えられています。最近運用され始めたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測結果には、岩石惑星の大気についてより多くの知見が得られるのではないか、と期待が寄せられています。
(文責:白樫 聖夢)

HD 260655 bについてもっと知りたい方は、以下のデータベースページをご覧ください。

参考文献
[1] HD 260655 b, ExoKyoto,
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/HD_260655_bJP.html, (閲覧日:2022/07/20)

[2] R. Luque et al., “The HD 260655 system: Two rocky worlds transiting a bright M dwarf at 10 pc”, A&A, 2022/04/22, https://arxiv.org/abs/2204.10261, (閲覧日:2022/07/19)

[3] AU Mic, simbad,
http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/simbasic?Ident=AU+MIC&submit=SIMBAD+search,(閲覧日:2022/07/20)

WASP-103 b

WASP-103 b は、太陽系から 1532.9 光年( パーセク)離れた恒星WASP-103 を周回する系外惑星で 2014 年に公開されました.
恒星 WASP-103 は視等級 12.0, 絶対等級 3.6 です.
この恒星は太陽の 1.2 倍の質量で、 半径は太陽の1.4 倍であり 表面温度は 6110 で、スペクトル型は F8Vです。
この恒星の惑星系で WASP-103 b は、恒星 WASP-103 のまわりを 公転周期0.9 日で、 軌道長半径 0.02 天文単位 ( 2969517.7 km)で公転しています。

WASP-103 bは、質量が木星の約1.5倍、半径が木星の約1.5倍のホットジュピターです。太陽系からは約1533光年離れたところにあります。スーパーWASPプロジェクトによりWASP-103に惑星があることが示唆され、その後2014年、TRAPPISTという望遠鏡でトランジット法により発見されました。
主星WASP-103(F型星)からの距離がわずか約0.02AUであるため、推定黒体温度が約2440Kとかなりの高温で、1日も経たないうちに公転してしまいます。また、WASP 103 bはホットジュピターの質量モデルから推定されるよりも低密度(約550kg/m3)と考えられています。これはWASP 103 b が主星から非常に多くの放射線を受けていること、公転する位置がRoche限界(主星の潮汐力が主星と惑星との引力とつり合うことができ、惑星が破壊されずにすむ距離の限界)にとても近く、潮汐破壊現象を起こしかけていることが関連していると考えられています。
このように潮汐破壊現象を起こしかけている惑星としては他にWASP 12 bやWASP 19 b、OGLE-TR-56 bがあります。これらの極限状態にあるホットジュピターは、ホットジュピターの最期を知る上で重要であると考えられており、焦点が集まっています。
(文責:白樫聖夢)

参考文献
[1] M. Gillon et al. “WASP-103 b: a new planet at the edge of tidal disruption”. A&A. 2014/02/05.
https://www.aanda.org/articles/aa/pdf/2014/02/aa23014-13.pdf, (閲覧日: 2022/03/21)
[2] WASP 103 b, ExoKyoto,
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/WASP-103_bJP.html, (閲覧日: 2022/03/18)

Imaginary Picture of WASP-103 b

Imaginary picture of WASP-103 b (Image credit: Miu Shimizu)

WASP-103 bについて詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/WASP-103_bJP.html