カテゴリー: 有名な系外惑星

K2-9b

K2ミッションキャンペーン1において、恒星31個に対し惑星候補天体が36個発見された。そこで地上観測データと、トランジット自動解析スキームの補償光学画像を組み合わせることで、初めて発見された17天体を含む21の候補天体が惑星であることが確認された。その中の一つがK2-9bである。K2-9はM2.5 ± 0.5、110 ± 12 pcの矮星で、ホスト星のスペクトルから惑星半径は2.25(+0.53−0.96) R⊕ で、公転周期は18.4498日であることがわかった。恒星からの入射フラックスは低いため、K2-9bの平衡温度は500K未満と推定され、ほぼ地球と同じような日射を受けていると考えられる。その一方で紫外線宇宙望遠鏡GALEXによると、ホスト星からのUVが非常に強いため、惑星の大気はその影響を受け、生き物が生存するには厳しい環境であるだろう。この地球から海王星サイズの半径をもつ、小さくて温度の低い惑星には、まだまだ研究の余地がある。

(文責・木村なみ)

K2-9 bについての詳しい情報はこちら
K2-9 b (exoplanetkyoto.org)

参考文献)
Two Small Temperate Planets Transiting Nearby M Dwarfs in K2 Campaigns 0 and 1
Schlieder, Joshua E et al.
Publication:
The Astrophysical Journal, Volume 818, Issue 1, article id. 87, 15 pp. (2016).
Pub Date: February 2016

補足)

・K2-9bはK2キャンペーン1で発見されたM2.5 ± 0.5、110 ± 12 pcの矮星である。
・K2-9bは Montet et al. (2015)にて初めて確認された。
・ホスト星のスペクトルと補償光学イメージングによると、惑星半径は2.25+0.53−0.96 R⊕ で、公転周期は18.4498日である。
・またK2-26bについて、恒星半径にしてはトランジット通過時間が長いので、円軌道ではなく、偏心軌道であるかもしれない。
・K2-9b とK2-26bの恒星からの入射フラックスは低く、平衡温度は<500Kと推定される。K2-9bはほぼ地球と同じような日射を受ける可能性がある。
・その一方で紫外線宇宙望遠鏡GALEXによると、ホスト星からのUVが非常に強いため、惑星の大気はその影響を受けている可能性がある。
・どちらの惑星も、地球から海王星サイズの半径をもつ、小さくて温度の低い惑星と考えられ、まだまだ研究の余地がある。

Kepler-90 i (Kepler 90 System)

ケプラー90はスペクトルがG型の主系列星で、地球から2545光年も離れたりゅう座に位置してい ます。
質量、体積はそれぞれ太陽のおよそ1.13倍、1.2倍です。 太陽は表面温度が5778ケルビン、年齢がおよそ46億年であるのに対し、Kepler-90は表面温度 は5930ケルビンで、年齢がおよそ20億年であると推定されています。Kepler-90の見かけの等級は14で、人間の目では暗すぎて見えません。

<図1 Kepler-90の想像図 Image credit Fuka Takagi & Yosuke A. Yamashiki>

Kepler-90の注目すべき点は、太陽系と同じ数の惑星が見つかっていることです。 惑星が8個見つかっている恒星は太陽とKepler-90だけで、最多記録です。

<図2 Kepler-90惑星系 ExoKyoto Applicationを利用>

2017年11月14日、NASAとGoogleはKepler-90系において8番目の惑星Kepler-90iを見つけ たと発表しました。 Kepler-90iは、ケプラー宇宙望遠鏡から得られたデータをGoogleが開発した新しい機械学習シ ステムを用いて解析して発見されました。 NASAは同じシステムでケプラー80gという惑星も発見しています。

<図3 Kepler-90iの想像図 Image Credit Ryusuke Kuroki, Yosuke A. Yamashiki>

Kepler-90の惑星系の構造は太陽系に似ています。 内側の6個の惑星はどれも地球より少し大きいか、海王星よりも少し小さいくらいの岩石惑星で、 外側の二つの惑星は大きなガス惑星です。 特に一番外側の木星サイズの惑星Kepler-90hは、地球太陽間の距離と同じ距離(1.01 AU)で中心星Kepler-90の周りを公転周期331日でまわっています。

もちろん、太陽系とは違う部分もあります。Kepler-90の8個の惑星のうち最も外側にある惑星の軌道半径は地球の軌道半径とだいたい同じ になって、8個の惑星が太陽系の惑星よりもはるかに狭い範囲に押し込められています。 内側の惑星の軌道は特に小さく、太陽系で一番内側の惑星である水星の公転周期が88日であるの に、Kepler-90iはたった14.4日で構成の周りを一周しています。 そのため、Kepler-90iの表面温度は640 ケルビンにも達し、我々の知っているような生命は存在で きないと考えられています。

Kepler90Movie

<Movie 1 Kepler-90と惑星群の公転>

また、Kepler-90の惑星はかつては我々の太陽系のようにもっと広がっていたが、何らかの原因 で現在の軌道に移動したと推測されています。

今回、新たな惑星を発見したGoogleのAIは、脳の仕組みに似た数式モデルのニューラルネット ワークを使ったものであり、非常に高い精度で惑星のシグナルを識別することができます。 このAIはケプラー宇宙望遠鏡で観測された約20万個の天体のうちたった670個を解析しただけで 2つの系外惑星を発見しており、今後さらなる系外惑星の発見が期待されています。

<村嶋慶哉・山敷庸亮>

今回発見されたKepler-90iについての詳しい情報は以下の惑星Database ページを

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-90_iJP.html

 主星Kepler-90についての詳しい情報は以下の恒星Database ページをご参照ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-90JP.html

55 Cancri e

(クレジット:Rina Maeda & SGH Moriyama High School)

55 Cnc e は、太陽系から 40.2 光年( パーセク)離れた恒星55 Cnc を周回する系外惑星で 2004 年に公開されました。恒星 55 Cnc は視等級 6.0, 絶対等級 5.5 です。この恒星は太陽の 1.0 倍の質量で、 半径は太陽の1.0 倍であり 表面温度は 5196 で、スペクトル型は K0IV-Vです。この恒星の惑星系で 55 Cnc e は、恒星 55 Cnc のまわりを 公転周期0.7 日で、 軌道長半径 0.02 天文単位 ( 2309641.5 km)で公転しています。

 

かに座-55eは地球から約40光年離れた、かに座55番星Aを公転する系外惑星です。かに座方向の夜空を眺めれば、肉眼でも観ることができます。質量は地球の8.1倍、直径は1.99倍の地球型惑星であり、いわゆるスーパーアース(巨大地球型惑星)です。ドップラー分光法で2004年8月30日に発見されました。

この惑星は、惑星質量の3分の1以上がダイヤモンドであり、表面はダイヤモンドと黒鉛で覆われているため、ダイヤモンド惑星とも呼ばれています。内部のダイヤモンドは地球上で見られるものより純度が非常に高いとされています。さらに深層部では、液体状態のダイヤモンドが存在している可能性があるとも言われています。

このかに座-55eは主星からの距離が233万㎞と非常に近く、公転周期が17時間41分、表面温度約2,000Kと推定されています。最近の発見によると、この惑星の大気は水素を多く含み、水蒸気が殆ど無い一方、シアン化水素を豊富に含むそうです。高温という条件に加えて、毒ガスであるシアン化水素が多く存在するため、生命が存在する可能性は低いかもしれません。また、主星との距離が近すぎるために、将来主星の重力によって潮汐破壊されるのではないかと考えられています。

(文責:高木風香)
(修正担当:野津湧太)

55 Cancri e の詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/55_Cnc_eJP.html

Beta Pictoris b がか座β星b

<Beta Pictoris b がか座β星b の想像図>

beta Pic b は、太陽系から 63.4 光年( パーセク)離れた恒星beta Pic を周回する系外惑星で 2008 年に公開されました。恒星 beta Pic は視等級 3.9, 絶対等級 2.4 です。この恒星は太陽の 1.7 倍の質量で、 半径は太陽の1.4 倍であり 表面温度は 8100 で、スペクトル型は A6Vです。この恒星の惑星系で beta Pic b は、恒星 beta Pic のまわりを 公転周期7707.0 日で、 軌道長半径 9.93 天文単位 ( 1485506856.1 km)で公転しています。

がか座β星bは、地球から63光年離れた、がか座β星から13.18天文単位離れた軌道を公転する惑星です。その大きさは木星の1.65倍、質量は木星の7倍で、2008年にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)で惑星からの光を直接捉える直接撮像によって発見されました。惑星が自転するとき、ドップラー効果で惑星表面のうち観測者から遠ざかる部分からの光の波長は長く、反対に近づく部分からの光の波長は短くなります。この波長の変化(ドップラーシフト)を分光観測によって求めた結果、がか座β星bは8時間の周期で自転しており、赤道面での自転速度は時速100,000kmであることがわかりました。地球の自転速度は時速1,700km、木星は47,000kmで、太陽系の惑星は質量が大きいほど自転が速い傾向にあります。がか座β星bにも太陽系の惑星と同じ傾向が当てはまることから、この惑星質量と自転速度の関係が普遍的であることが示唆されます。

がか座β星の年齢は2000千万年と若く、その周りには1000天文単位にわたり塵円盤が広がっていて、まさに惑星形成が進行中の惑星系と言えます。惑星は時間経過とともに冷えて収縮すると考えられているので、がか座β星bの自転はこれによってさらに速くなると予想されます。
またこの惑星系では系外彗星が確認されていて、フランスの研究チームが行った493個の彗星の調査から、軌道が巨大惑星との重力相互作用を受けて様々な軌道を持つ古い彗星群と、もともとは1つの天体だったものが崩壊して多数の彗星になった群の2つの群が存在することがわかりました。前者の彗星群ではガスやダストの放出といった彗星活動が活発でないことから、何度も中心星の近くを通過して氷などの揮発性物質がすでに枯渇していると考えられています。後者の群では彗星活動が活発で、ほぼ同一の軌道を周っていることから、一つの大きな天体が分裂して生まれた群であると考えられます。
がか座β星系のような進化途中の若い惑星系は、45億年前に太陽系で何が起きていたかを知る上で非常に重要な研究対象です。

<文責:山中陽裕>

beta Pic b についての詳しい情報は以下のデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/beta_Pic_bJP.html

参考文献

http://www.eso.org/public/news/eso1414/

http://www.nature.com/nature/journal/v509/n7498/full/nature13253.html?foxtrotcallback=true

http://www.eso.org/public/news/eso1432/

GJ 1132b


(GJ1132bの想像図   画:清水海羽 守山高校ハビタブル研究会)

 

これまでにたくさんの系外惑星が発見され、その幾つかには大気が存在することがわかってきました。しかし、それらはいずれも木星のような巨大ガス惑星でした。ところが、今回大気の存在が確認されたGJ1132bは、地球とほとんど同じ大きさの「地球型惑星」です。地球から39光年先にあるM型星GJ1132を周回するこの惑星は、地球のおよそ1.4倍のサイズと1.6倍の質量を持っています。なお、この惑星は2015年にすでに発見されており、金星と似た惑星ではないかと推測されていました。

では、一体どうしてこの惑星が大気を持っているとわかったのでしょうか。系外惑星の大気の観測は、「トランジット観測」という手法を用いて行われます。これは、恒星の前を惑星が横切った際に、我々観測者に届く恒星からの光が遮られて弱くなる現象を利用した手法です。横切る惑星のサイズが大きいほど、この減光率は大きくなります。太陽系で言えば、月や金星が太陽からの光を隠す現象、すなわち「日食」にあたります。(つい先日、アメリカ大陸での日食が話題になりましたね)ところが、この減光率が観測する光の波長によって異なる場合があります。これは、光の波長によって惑星が遮る領域のサイズが異なることを意味します。つまり、ある波長の光は透過し、別の波長の光は通さないような物質が、惑星の表面に纏わり付いていると考えられるのです。そのような物質は、ガス、つまり大気であると考えるのが妥当でしょう。

今回、様々な波長の光でGJ1132bによるGJ1132の減光率を観測した結果、全波長で平均した「惑星大気の半径」は1.43±0.16地球半径であるのに対して、固体部分(つまり惑星の「地表」)の半径は約1.375地球半径であるとわかりました。さらに、特定の波長の「惑星大気の半径」が大きいことから、この厚い大気は水蒸気とメタンを含んでいることがわかりました。

このような、大気(しかも水蒸気とメタンを含む)と地表を持った地球型惑星には、生命が存在しているかもしれません。しかし、残念ながらGJ1132bの表面温度は370℃もあると推測され、生命が存在するのは難しそうです。一方で、M型星は地球の周りにたくさん存在しており、似たような惑星が今後見つかることが期待されます。
(文責:芝池諭人)

GJ 1132 bについての詳しい情報
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_1132_bJP.html

参考文献
The Astronomical Journal (2017): “Detection of the Atmosphere of the 1.6 M_⊕ Exoplanet GJ1132b” John Southworth1, Luigi Mancini, Nikku Madhusudhan, Paul Mollière, Simona Ciceri, and Thomas Henning (http://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/aa6477/meta)
BBS NEWS, Science & Environment: Atmosphere found around Earth-sized planet GJ 1132b (http://www.bbc.com/news/science-environment-39521344)
sorae.jp,天文: 地球サイズの系外惑星「GJ1132b」に大気 水の存在の可能性も(http://sorae.jp/10/2017_04_07_taiki.html)


(ExoKyoto Stellar Mapを用いて表示したGJ 1132 bの位置)


(ExoKyoto Stellar Mapを用いて表示したGJ 1132 bの位置 Zoom Level 3)

KELT-9 b

(Imaginary Picture of KELT-9 b and its host star KELT-9 (HD195689), credit: Miu Shimizu, Habitable Research Unit – SGH Moriyama High School)
(KELT-9 b と主星KELT-9 (HD195689) の想像図 守山高校ハビタブル研究会 清水海羽 画)

惑星と聞けばまずは、我々の住む地球のような環境、もしくは火星や木星など、太陽系の仲間たちを想像します。実際に、発見が話題になる系外惑星は、地球に似ているものや、水の存在が期待されるものが多いように感じます。それはもちろん、地球に似た環境ならば生命の存在が期待されるからですが、系外惑星の中には、我々の知る惑星環境とはかけ離れているからこそ面白いものもたくさんあります。

KELT-9 bは、恒星に匹敵するほど熱い惑星として話題になりました。はくちょう座の方向、650光年先のA型星 KELT-9 の周りを周期1.48日で公転しており、質量と半径はそれぞれ木星の2.9倍と1.9倍ほどの、巨大ガス惑星です。約1万度という主星の表面温度の高さ(太陽でも約6千度)と、そこから0.03 au しか離れていない公転軌道の近さ(水星軌道の10分の1以下)ゆえ、この惑星の表面はかなりの高温になっていることが予想されます。

実際に、惑星が主星の後ろ側に隠れる場面を観測した結果、この惑星の昼側は4600 Kという、惑星のイメージを覆すほどの高温環境であることがわかりました。我々の太陽系を含む天の川銀河にある恒星の7割以上を占めると言われるM型星でも、その表面温度は4000度に達しません。つまり、KELT-9 b は惑星でありながら、多くの恒星よりも熱い大気を持っていることになります。この温度になると、水や酸素、二酸化炭素など、惑星の大気には馴染み深い “分子” が存在できないため、この惑星の大気は原子が主成分になっていると考えられます。これまで常識だった「分子を主成分とする惑星大気」とはまったく違う、しかし内側に熱源を持つ恒星の大気とも異なる、全く新しい未知の大気です。

さらに、主星の極端紫外線(波長が91.2nm未満の非常に高エネルギーの電磁波)の放射が非常に強く、ただでさえ高温のために膨らんだ惑星大気を吹き飛ばし続けていると予想されます。その量は低く見積もっても1秒間に1万トン以上という勢いで、吹き飛ばされた大気は彗星の尾のようにたなびいて見えるかもしれません。

また、もうひとつこの惑星が面白い点は、主星の自転軸と惑星の公転軸が90度近く傾いた、極軌道にあることです。主星と同時に惑星が生まれる場合、通常は主星の自転軸と惑星の公転軸が平行になるはずですが、他の惑星との重力相互作用などいくつかの原因によって、このような変わった軌道に落ち着いた可能性があります。

今後、ハッブル宇宙望遠鏡 (HST) や、2018年に打ち上げが予定されるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) などの観測によって、大気流出の様子や大気の成分の調査が期待されます。これまであまり調べられてこなかった、高温の星を回る惑星の一生についての、新たな知見につながるかもしれません。

KELT-9 b を発見したKELTサーベイは、これまでのトランジット法による惑星探査計画では明るすぎて調べられなかった恒星をターゲットとし、小型の望遠鏡を用いて全天を探査するプロジェクトです。今回の発見には、日本の成田憲保氏と福井暁彦氏も参加しています。
(文責 石川 裕之 (総合研究大学院大学・国立天文台))
(修正担当 佐々木貴教)

KELT-9 bははくちょう座に位置し、Kepler観測領域の近くにある。主星KELT-9 (HD 195689) は視等級 7.6 スペクトル A0型の星で、太陽系から615 光年離れている。肉眼や双眼鏡でも観測できる星であるので、夏の大三角形とともに機会があれば探してみてはいかがだろうか?


(ExoKyoto Stellar Windowを用いて天球上に表示したKELT-9b & KELT-9 (HD195689), (Kepler領域の星も参考までに表示) )
KELT-9 b の詳しい情報はこちら。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/KELT-9_bJP.html