tau Cet e は、太陽系から 11.9 光年( 3.65パーセク)離れた恒星tau Cet を周回する系外惑星で 2012 年に公開された. 恒星 tau Cet は視等級 3.5, 絶対等級 5.7 である. この恒星は太陽の 0.8 倍の質量で、 半径は太陽の0.8 倍であり 表面温度は 5344 ケルビンで、スペクトル型は G8.5 Vである。 この恒星の惑星系で tau Cet e は、恒星 tau Cet のまわりを 公転周期162.9 日で、 軌道長半径 0.54 天文単位 ( 80,483,654.4 km)で公転している。
Tau Cet e のCet はCetusの略でくじら座を意味しています。くじら座を構成する恒星の一部は,国際天文学連合によって正式に固有名詞が定められており,「Tau Cet(くじら座タウ星)」もそのひとつです。この星のまわりを回る5つの惑星はHARPSという分光器を用いた視線速度法で発見されました。観測が行われた当時,Tau Cet 系の惑星はb, c, d の3つだと考えられていました。しかし,得られた観測データからノイズを取り除くことで,さらにふたつの惑星e, fの存在が示唆されました。
これらの惑星の中で主星から4番目に近い軌道を回っている「Tau Cet e」は,ハビタブルゾーンに位置する可能性があるそうです。主星までの距離は0.552 AUで,太陽系で言えば水星と金星の間あたりに相当します。そして,太陽と同じG型星である主星の質量および直径は,太陽の80%程度,明るさは50%程度と見積もられています。このことから,Tau Cet 系のハビタブルゾーンは太陽系のそれよりも内側にくることが予想され,このことから,ちょうど Tau Cet e はハビタブルゾーンに位置しているかもしれないそうです。
しかし,惑星がハビタブルであるかどうかを議論するには,単純に太陽との距離だけではなく,惑星自身の大きさや質量,さらには惑星大気による温室効果など,他の要因も考慮する必要があります。視線速度法では惑星の下限質量しかわからず,Tau Cet e に関する詳細な物理量はほとんどわかっていません。しかし,Tau Cet は地球から11.9光年という,比較的近いところに位置する恒星系ですので,tau Cet e のトランジット観測や大気分光観測が行われる日も近いかもしれませんね!
(文責:鈴木杏那)
参考文献:
Tuomi et al. (2012)”Signals embedded in the radial velocity noise”
Teixeira et al. (2008) “Solar-like oscillations in the G8 V star τ Ceti”
“NASA EXOPLANET ARCHIVE”
https://exoplanetarchive.ipac.caltech.edu/index.html
tau Cet e について詳しく知りたい方は以下のExokyotoのデータベースページをご覧ください。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/tau_Cet_eJP.html