カテゴリー: 系外惑星の紹介

GJ667Cc

(潮汐ロックされている場合のGJ667Ccの想像図 Credit : Natsuki Shirako, SGH Moriyama High School)


(GJ667Ccの想像図 清水海羽 画 (SGH 守山高校ハビタブル研究会) )

GJ667Ccはさそり座に位置し、太陽系から22.3光年離れた恒星GJ667Cをまわるスーパーアースサイズの太陽系外惑星です。主星であるGJ667Cは三重連星であり、GJ667A、GJ667Bのさらに外側を周っています。

2011年に視線速度法にて発見された、地球質量の3.8倍のスーパーアースで、半径は正確ではないが、ExoKyotoの質量半径推定モジュールを用いると、地球の1.43倍と試算されます。
GJ667Cには少なくとも2つの惑星が周っていると考えられており、GJ667Ccは外側を周っています。主星までの距離は太陽地球間距離の12 %( 0.12 天文単位)と近いのですが、主星の温度が3,600Kと低いため、その黒体温度は262 K (潮汐ロックされている場合昼面は312 K)と見積もられており、ハビタブルゾーンの圏内に入っています。実際、GJ667Ccの、地球にどれくらい似ているか示す指標、ESIは0.84で、これまでに発見された系外惑星の中でもトップレベルです。さらに、赤色矮星は紫外線などの生命にとって有害な電磁波を出す量が少ないため、生命にとっては好都合だと言えます。このような理由で生命が住むには適した惑星として注目されてきたため、映画Alien vs Predator ではテラフォーミングされた惑星として登場しました。

GJ667Ccの惑星境界での輻射は1545 W/m2で、ほぼ地球 (1367 W/m2)と等しい。M型星であることを考慮するとしかし、赤外線成分が強く、より温室効果が進んでいる可能性もあります。海の存在も想定されるが、長年の輻射とM型星の進化過程により海が蒸発しきっている可能性もある。Kopparapu et al.によると、暴走温室限界のやや内側に位置するので、その可能性もありなす。

主星のGJ667Cは太陽質量の0.33倍、太陽半径の0.34倍のM1.5のスペクトルを持つ赤色矮星で、フレアの発生が考えられるが、具体的な観測データに乏しい。GJ667Ccの軌道長半径は0.125天文単位なので、フレア星であるならその影響は大きいと考えられ、大気組成によると生命に大きな影響がありうるとも考えられる。

Maehara et al.2016による温度だけによる最大フレアのエネルギーを予想すると、6.0 x 10^34 ergs となり、軌道長半径が短いので、太陽での最大フレアを地球境界でうける数万倍のエネルギーを受ける可能性があります。

GJ667Ccの詳しい情報は以下のページ

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_667_C_cJP.html

(梨元昴・山敷庸亮)

参考資料
http://www.eso.org/public/archives/releases/sciencepapers/eso1328/eso1328a.pdf


GJ667Ccのハビタブルゾーン(Kopparapu et al. 2013)


Stellar MapによるGJ667Cの位置

GJ667Ccについての情報は以下のリンク
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_667_C_cJP.html

Kepler-90 i (Kepler 90 System)

ケプラー90はスペクトルがG型の主系列星で、地球から2545光年も離れたりゅう座に位置してい ます。
質量、体積はそれぞれ太陽のおよそ1.13倍、1.2倍です。 太陽は表面温度が5778ケルビン、年齢がおよそ46億年であるのに対し、Kepler-90は表面温度 は5930ケルビンで、年齢がおよそ20億年であると推定されています。Kepler-90の見かけの等級は14で、人間の目では暗すぎて見えません。

<図1 Kepler-90の想像図 Image credit Fuka Takagi & Yosuke A. Yamashiki>

Kepler-90の注目すべき点は、太陽系と同じ数の惑星が見つかっていることです。 惑星が8個見つかっている恒星は太陽とKepler-90だけで、最多記録です。

<図2 Kepler-90惑星系 ExoKyoto Applicationを利用>

2017年11月14日、NASAとGoogleはKepler-90系において8番目の惑星Kepler-90iを見つけ たと発表しました。 Kepler-90iは、ケプラー宇宙望遠鏡から得られたデータをGoogleが開発した新しい機械学習シ ステムを用いて解析して発見されました。 NASAは同じシステムでケプラー80gという惑星も発見しています。

<図3 Kepler-90iの想像図 Image Credit Ryusuke Kuroki, Yosuke A. Yamashiki>

Kepler-90の惑星系の構造は太陽系に似ています。 内側の6個の惑星はどれも地球より少し大きいか、海王星よりも少し小さいくらいの岩石惑星で、 外側の二つの惑星は大きなガス惑星です。 特に一番外側の木星サイズの惑星Kepler-90hは、地球太陽間の距離と同じ距離(1.01 AU)で中心星Kepler-90の周りを公転周期331日でまわっています。

もちろん、太陽系とは違う部分もあります。Kepler-90の8個の惑星のうち最も外側にある惑星の軌道半径は地球の軌道半径とだいたい同じ になって、8個の惑星が太陽系の惑星よりもはるかに狭い範囲に押し込められています。 内側の惑星の軌道は特に小さく、太陽系で一番内側の惑星である水星の公転周期が88日であるの に、Kepler-90iはたった14.4日で構成の周りを一周しています。 そのため、Kepler-90iの表面温度は640 ケルビンにも達し、我々の知っているような生命は存在で きないと考えられています。

Kepler90Movie

<Movie 1 Kepler-90と惑星群の公転>

また、Kepler-90の惑星はかつては我々の太陽系のようにもっと広がっていたが、何らかの原因 で現在の軌道に移動したと推測されています。

今回、新たな惑星を発見したGoogleのAIは、脳の仕組みに似た数式モデルのニューラルネット ワークを使ったものであり、非常に高い精度で惑星のシグナルを識別することができます。 このAIはケプラー宇宙望遠鏡で観測された約20万個の天体のうちたった670個を解析しただけで 2つの系外惑星を発見しており、今後さらなる系外惑星の発見が期待されています。

<村嶋慶哉・山敷庸亮>

今回発見されたKepler-90iについての詳しい情報は以下の惑星Database ページを

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-90_iJP.html

 主星Kepler-90についての詳しい情報は以下の恒星Database ページをご参照ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-90JP.html

Ross 128 b (Proxima Virginis b)


(Ross-128bの想像図 Image Credit 稲垣遥 守山高校ハビタブル研究会)

(Ross-128bの想像図 Image Credit: Yosuke Yamashiki, Ryusuke Kuroki)
太陽系から11光年(3.4 パーセク)の彼方に新たなハビタブルな惑星が発見されました。質量は推計で地球の1.35倍(ExoKyotoでは推計値の1.31を用いている)、トランジットをしていないため正確な半径がわかりませんが、ExoKyotoに内装されている質量推定モジュール(Weiss & Marcy, 2014)によると、半径は地球の1.078倍と推計されます。主星はおとめ座のM型星で、星の推定温度は3192 K, 質量は太陽の0.16 倍の小さなM型星です。ハビタブルプラネットとしては、Proxima Cen bに次いで二番目に地球から近いということになります。フランス、グルノーブル・アルプ大学の研究チームがチリにある欧州南天天文台(ESC)の直径3.6メートル望遠鏡と高精度視線速度系外惑星探査装置HARPS*を用いて発見しました。恒星Ross128の周りを1周9.9日で回っています。惑星の黒体温度はBonfils et al. 2017 によると地球アルベドで269 K (ExoKyotoでは281 K), 金星アルベドで213 Kとなり、ハビタブルと判定可能です(地球の黒体温度は255 K)。
プロキシマ・ケンタウリは若い恒星で強烈なフレアを発生させるので、Proxima Cen bは生命が存在するには困難ではないかと考えられています。一方、恒星Ross128は赤色矮星で、薄暗く、自転周期が120日以上と見積もられており、それにともなって活動が穏やかで、スーパーフレアを頻繁に発生させないだろうと考えられています。そのため、大気の状態にもよりますが、液体の水が存在し、生命が存在する可能性もあるのではないかと考えられています。
2024年に完成予定の巨大望遠鏡ELTでの観測が始まれば、惑星の大気の組成なども調べられるようになると期待されています。

(坂東日菜・山敷庸亮)

詳しい情報は以下のデータベースページへ
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Ross_128_bJP.html

*HARPS ヨーロッパ南天天文台 (ESO)のチリのラ・シヤ天文台にある3.6m望遠鏡に設置された分光器で、視線速度法で太陽系外惑星の観測を行い、今まで130個以上の太陽系外惑星を発見している。トランジットしない惑星の発見と、質量の計測が可能。人類が始めて太陽系外惑星を発見したときに用いられたELODIEの改良型の第二世代の視線速度法探査装置で、ミシェルマイヨールらにより装置のスペックが決定され、人の歩く速度(3.5 km/h (0.97 m/s) )のトランジットの観測が可能である(有効精度としては30 cm/s)。そのため、恒星のまわりを公転する質量の小さい地球型惑星の視線速度法による観測が可能となる。

X. Bonfils et al. 2017. A temperate exo-Earth around a quiet M dwarf at 3.4 parsecs. Astronomy & Astrophysics manuscript © ESO

Ross 128 b (Proxima Vir b) の想像図 *潮汐ロックされていないと仮定

Ross 128 b (Proxima Vir b) のハビタブルゾーン(太陽系相当天文単位SEAU)と公転軌道

Ross 128 b (Proxima Vir b) のハビタブルゾーン(Kopparapu et al.)と公転軌道
ExoKyotoでは、Ross 128 bは地球型惑星のハビタブルゾーン限界のやや内側に計算されています。

Ross 128 b (Proxima Vir b) のハビタブルゾーン(Kopparapu Original)と公転軌道
ExoKyotoでは、Ross 128 bは地球型惑星のハビタブルゾーン限界のやや内側に計算されています。

Ross 128 b (Proxima Vir b) の大きさの比較

Ross 128 b (Proxima Vir b) のStellar Window上での位置

Ross 128 b (Proxima Vir b) のStellar Window上での位置

55 Cancri e

(クレジット:Rina Maeda & SGH Moriyama High School)

55 Cnc e は、太陽系から 40.2 光年( パーセク)離れた恒星55 Cnc を周回する系外惑星で 2004 年に公開されました。恒星 55 Cnc は視等級 6.0, 絶対等級 5.5 です。この恒星は太陽の 1.0 倍の質量で、 半径は太陽の1.0 倍であり 表面温度は 5196 で、スペクトル型は K0IV-Vです。この恒星の惑星系で 55 Cnc e は、恒星 55 Cnc のまわりを 公転周期0.7 日で、 軌道長半径 0.02 天文単位 ( 2309641.5 km)で公転しています。

 

かに座-55eは地球から約40光年離れた、かに座55番星Aを公転する系外惑星です。かに座方向の夜空を眺めれば、肉眼でも観ることができます。質量は地球の8.1倍、直径は1.99倍の地球型惑星であり、いわゆるスーパーアース(巨大地球型惑星)です。ドップラー分光法で2004年8月30日に発見されました。

この惑星は、惑星質量の3分の1以上がダイヤモンドであり、表面はダイヤモンドと黒鉛で覆われているため、ダイヤモンド惑星とも呼ばれています。内部のダイヤモンドは地球上で見られるものより純度が非常に高いとされています。さらに深層部では、液体状態のダイヤモンドが存在している可能性があるとも言われています。

このかに座-55eは主星からの距離が233万㎞と非常に近く、公転周期が17時間41分、表面温度約2,000Kと推定されています。最近の発見によると、この惑星の大気は水素を多く含み、水蒸気が殆ど無い一方、シアン化水素を豊富に含むそうです。高温という条件に加えて、毒ガスであるシアン化水素が多く存在するため、生命が存在する可能性は低いかもしれません。また、主星との距離が近すぎるために、将来主星の重力によって潮汐破壊されるのではないかと考えられています。

(文責:高木風香)
(修正担当:野津湧太)

55 Cancri e の詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/55_Cnc_eJP.html

Beta Pictoris b がか座β星b

<Beta Pictoris b がか座β星b の想像図>

beta Pic b は、太陽系から 63.4 光年( パーセク)離れた恒星beta Pic を周回する系外惑星で 2008 年に公開されました。恒星 beta Pic は視等級 3.9, 絶対等級 2.4 です。この恒星は太陽の 1.7 倍の質量で、 半径は太陽の1.4 倍であり 表面温度は 8100 で、スペクトル型は A6Vです。この恒星の惑星系で beta Pic b は、恒星 beta Pic のまわりを 公転周期7707.0 日で、 軌道長半径 9.93 天文単位 ( 1485506856.1 km)で公転しています。

がか座β星bは、地球から63光年離れた、がか座β星から13.18天文単位離れた軌道を公転する惑星です。その大きさは木星の1.65倍、質量は木星の7倍で、2008年にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)で惑星からの光を直接捉える直接撮像によって発見されました。惑星が自転するとき、ドップラー効果で惑星表面のうち観測者から遠ざかる部分からの光の波長は長く、反対に近づく部分からの光の波長は短くなります。この波長の変化(ドップラーシフト)を分光観測によって求めた結果、がか座β星bは8時間の周期で自転しており、赤道面での自転速度は時速100,000kmであることがわかりました。地球の自転速度は時速1,700km、木星は47,000kmで、太陽系の惑星は質量が大きいほど自転が速い傾向にあります。がか座β星bにも太陽系の惑星と同じ傾向が当てはまることから、この惑星質量と自転速度の関係が普遍的であることが示唆されます。

がか座β星の年齢は2000千万年と若く、その周りには1000天文単位にわたり塵円盤が広がっていて、まさに惑星形成が進行中の惑星系と言えます。惑星は時間経過とともに冷えて収縮すると考えられているので、がか座β星bの自転はこれによってさらに速くなると予想されます。
またこの惑星系では系外彗星が確認されていて、フランスの研究チームが行った493個の彗星の調査から、軌道が巨大惑星との重力相互作用を受けて様々な軌道を持つ古い彗星群と、もともとは1つの天体だったものが崩壊して多数の彗星になった群の2つの群が存在することがわかりました。前者の彗星群ではガスやダストの放出といった彗星活動が活発でないことから、何度も中心星の近くを通過して氷などの揮発性物質がすでに枯渇していると考えられています。後者の群では彗星活動が活発で、ほぼ同一の軌道を周っていることから、一つの大きな天体が分裂して生まれた群であると考えられます。
がか座β星系のような進化途中の若い惑星系は、45億年前に太陽系で何が起きていたかを知る上で非常に重要な研究対象です。

<文責:山中陽裕>

beta Pic b についての詳しい情報は以下のデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/beta_Pic_bJP.html

参考文献

http://www.eso.org/public/news/eso1414/

http://www.nature.com/nature/journal/v509/n7498/full/nature13253.html?foxtrotcallback=true

http://www.eso.org/public/news/eso1432/

Kepler-35(AB) b

(Kepler-35AB bの想像図 前田理那 SGH守山高校ハビタブル研究会)

Kepler-35bは地球から約5,365光年の距離にあり、はくちょう座の中にある巨大ガス惑星です。2012年にケプラー宇宙望遠鏡により発見されました。Kepler-35bは質量が本星の1/8、半径が地球の約8倍で土星サイズのガス惑星と考えられています。

Kepler-35bの注目すべき点は、周連星惑星(連星の周りを回る惑星)だということです。Kepler-35bの主星は両者ともG型星、太陽よりもやや小さな星で共通重心の回りを20日かけて公転し、その外側をKepler-35bが131日かけて公転しています。

周連星惑星は主星が1つの惑星と比べて軌道が安定しないため長い間その存在が議論されてもましたが、2011年にケプラー宇宙望遠鏡で周連星惑星Kepler-16bが発見されたことを皮切りに少しずつ発見され始めており、現在では主星を3つ、4つもつ惑星も発見されています。

Kepler-35(AB)bの主星であるKepler-35A、Kepler-35Bは両者とも太陽よりもやや小さいG型星(G型というのは恒星の分類法のー種で太陽もG型星に分類されます)で、互いに共通な重心の周りを20日かけて公転しています。

Kepler-35bには生命が存在するのでしょうか。Kepler-35bは木星や土星のようなガス惑星なので地球と同じような生命がいるとは考えにくいですが、ひょっとしたらアメリカの天文学者カールセーガン博士が想像したような気球形の生物なんかがいるのかもしれません。また、ガス惑星のまわりに巨大岩石衛星が存在する可能性も高く、そこに我々のような生命が存在するかもしれません。

銀河系内には周連星惑星が数百万個存在すると現在では考えられています。その中に生命を宿している惑星は存在するのでしょうか。

太陽が2つ連行する世界の生命、そんなものがいると考えるだけでもわくわくしますね。

(梨元昴・山敷庸亮)

Kepler-35 bについての情報は こちらから

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-35_(AB)_bJP.html