カテゴリー: 系外惑星の紹介

GJ 1132b


(GJ1132bの想像図   画:清水海羽 守山高校ハビタブル研究会)

 

これまでにたくさんの系外惑星が発見され、その幾つかには大気が存在することがわかってきました。しかし、それらはいずれも木星のような巨大ガス惑星でした。ところが、今回大気の存在が確認されたGJ1132bは、地球とほとんど同じ大きさの「地球型惑星」です。地球から39光年先にあるM型星GJ1132を周回するこの惑星は、地球のおよそ1.4倍のサイズと1.6倍の質量を持っています。なお、この惑星は2015年にすでに発見されており、金星と似た惑星ではないかと推測されていました。

では、一体どうしてこの惑星が大気を持っているとわかったのでしょうか。系外惑星の大気の観測は、「トランジット観測」という手法を用いて行われます。これは、恒星の前を惑星が横切った際に、我々観測者に届く恒星からの光が遮られて弱くなる現象を利用した手法です。横切る惑星のサイズが大きいほど、この減光率は大きくなります。太陽系で言えば、月や金星が太陽からの光を隠す現象、すなわち「日食」にあたります。(つい先日、アメリカ大陸での日食が話題になりましたね)ところが、この減光率が観測する光の波長によって異なる場合があります。これは、光の波長によって惑星が遮る領域のサイズが異なることを意味します。つまり、ある波長の光は透過し、別の波長の光は通さないような物質が、惑星の表面に纏わり付いていると考えられるのです。そのような物質は、ガス、つまり大気であると考えるのが妥当でしょう。

今回、様々な波長の光でGJ1132bによるGJ1132の減光率を観測した結果、全波長で平均した「惑星大気の半径」は1.43±0.16地球半径であるのに対して、固体部分(つまり惑星の「地表」)の半径は約1.375地球半径であるとわかりました。さらに、特定の波長の「惑星大気の半径」が大きいことから、この厚い大気は水蒸気とメタンを含んでいることがわかりました。

このような、大気(しかも水蒸気とメタンを含む)と地表を持った地球型惑星には、生命が存在しているかもしれません。しかし、残念ながらGJ1132bの表面温度は370℃もあると推測され、生命が存在するのは難しそうです。一方で、M型星は地球の周りにたくさん存在しており、似たような惑星が今後見つかることが期待されます。
(文責:芝池諭人)

GJ 1132 bについての詳しい情報
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_1132_bJP.html

参考文献
The Astronomical Journal (2017): “Detection of the Atmosphere of the 1.6 M_⊕ Exoplanet GJ1132b” John Southworth1, Luigi Mancini, Nikku Madhusudhan, Paul Mollière, Simona Ciceri, and Thomas Henning (http://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/aa6477/meta)
BBS NEWS, Science & Environment: Atmosphere found around Earth-sized planet GJ 1132b (http://www.bbc.com/news/science-environment-39521344)
sorae.jp,天文: 地球サイズの系外惑星「GJ1132b」に大気 水の存在の可能性も(http://sorae.jp/10/2017_04_07_taiki.html)


(ExoKyoto Stellar Mapを用いて表示したGJ 1132 bの位置)


(ExoKyoto Stellar Mapを用いて表示したGJ 1132 bの位置 Zoom Level 3)

KELT-9 b

(Imaginary Picture of KELT-9 b and its host star KELT-9 (HD195689), credit: Miu Shimizu, Habitable Research Unit – SGH Moriyama High School)
(KELT-9 b と主星KELT-9 (HD195689) の想像図 守山高校ハビタブル研究会 清水海羽 画)

惑星と聞けばまずは、我々の住む地球のような環境、もしくは火星や木星など、太陽系の仲間たちを想像します。実際に、発見が話題になる系外惑星は、地球に似ているものや、水の存在が期待されるものが多いように感じます。それはもちろん、地球に似た環境ならば生命の存在が期待されるからですが、系外惑星の中には、我々の知る惑星環境とはかけ離れているからこそ面白いものもたくさんあります。

KELT-9 bは、恒星に匹敵するほど熱い惑星として話題になりました。はくちょう座の方向、650光年先のA型星 KELT-9 の周りを周期1.48日で公転しており、質量と半径はそれぞれ木星の2.9倍と1.9倍ほどの、巨大ガス惑星です。約1万度という主星の表面温度の高さ(太陽でも約6千度)と、そこから0.03 au しか離れていない公転軌道の近さ(水星軌道の10分の1以下)ゆえ、この惑星の表面はかなりの高温になっていることが予想されます。

実際に、惑星が主星の後ろ側に隠れる場面を観測した結果、この惑星の昼側は4600 Kという、惑星のイメージを覆すほどの高温環境であることがわかりました。我々の太陽系を含む天の川銀河にある恒星の7割以上を占めると言われるM型星でも、その表面温度は4000度に達しません。つまり、KELT-9 b は惑星でありながら、多くの恒星よりも熱い大気を持っていることになります。この温度になると、水や酸素、二酸化炭素など、惑星の大気には馴染み深い “分子” が存在できないため、この惑星の大気は原子が主成分になっていると考えられます。これまで常識だった「分子を主成分とする惑星大気」とはまったく違う、しかし内側に熱源を持つ恒星の大気とも異なる、全く新しい未知の大気です。

さらに、主星の極端紫外線(波長が91.2nm未満の非常に高エネルギーの電磁波)の放射が非常に強く、ただでさえ高温のために膨らんだ惑星大気を吹き飛ばし続けていると予想されます。その量は低く見積もっても1秒間に1万トン以上という勢いで、吹き飛ばされた大気は彗星の尾のようにたなびいて見えるかもしれません。

また、もうひとつこの惑星が面白い点は、主星の自転軸と惑星の公転軸が90度近く傾いた、極軌道にあることです。主星と同時に惑星が生まれる場合、通常は主星の自転軸と惑星の公転軸が平行になるはずですが、他の惑星との重力相互作用などいくつかの原因によって、このような変わった軌道に落ち着いた可能性があります。

今後、ハッブル宇宙望遠鏡 (HST) や、2018年に打ち上げが予定されるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) などの観測によって、大気流出の様子や大気の成分の調査が期待されます。これまであまり調べられてこなかった、高温の星を回る惑星の一生についての、新たな知見につながるかもしれません。

KELT-9 b を発見したKELTサーベイは、これまでのトランジット法による惑星探査計画では明るすぎて調べられなかった恒星をターゲットとし、小型の望遠鏡を用いて全天を探査するプロジェクトです。今回の発見には、日本の成田憲保氏と福井暁彦氏も参加しています。
(文責 石川 裕之 (総合研究大学院大学・国立天文台))
(修正担当 佐々木貴教)

KELT-9 bははくちょう座に位置し、Kepler観測領域の近くにある。主星KELT-9 (HD 195689) は視等級 7.6 スペクトル A0型の星で、太陽系から615 光年離れている。肉眼や双眼鏡でも観測できる星であるので、夏の大三角形とともに機会があれば探してみてはいかがだろうか?


(ExoKyoto Stellar Windowを用いて天球上に表示したKELT-9b & KELT-9 (HD195689), (Kepler領域の星も参考までに表示) )
KELT-9 b の詳しい情報はこちら。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/KELT-9_bJP.html

LHS 1140b

LHS 1140b は、くじら座に位置し、太陽系から約40.7光年離れたところにある M 型矮星(質量が太陽の 14.6% ほど)の周りを回る super-Earth です。中心星周りのハビタブルゾーンとよばれる領域に位置しており、液体の水の存在、ひいては地球外生命の存在まで期待される地球型惑星のひとつです。

この惑星は MEarth (注1)とよばれる天文台で、太陽よりも小さな恒星の周りで惑星を探すプロジェクトにより、トランジット法を用いて発見されました。その後 HARPS (注2)とよばれる観測装置を用いて、視線速度法による観測も行われました。2017年4月20日号のNature誌に掲載されました。 トランジット法では惑星の半径が、視線速度法では惑星の質量が求まります。これら2つの観測結果を合わせることで、惑星の密度を推定することが可能となります。(詳しくは「系外惑星の探し方」をご参照ください)

これらの観測により、LHS 1140b は質量が地球の 6.65 倍、半径が地球の 1.43 倍であると求まりました。さらに、そこから推定された密度は 12.5 g/cm3 とかなり大きく、鉄や岩石などを主成分とした惑星であること、および軽い大気成分をあまりまとっていないこと、がわかりました。また、公転周期(つまり1年間の長さ)は 24.7 日ほどで、離心率(楕円の程度)は 0.29 以下であることもわかりました。

これまでにも太陽系の近く(数十光年以内)の M 型矮星周りで、ハビタブルゾーンに位置する地球サイズの惑星はいくつか発見されています。しかし、太陽系に最も近い M 型矮星の周りを回る Proxima Centauri b は、視線速度法による観測しかないため質量は下限値しか求まっておらず、また密度もわかっていません。一方で、大きな話題を呼んだ TRAPPIST-1 系の惑星については、トランジット法による観測しかないため、質量や密度の推定にはまだ大きな不確定性が残っています。今回の LHS 1140b は、初めて岩石惑星であることが「確定」された太陽系近傍のハビタブルプラネットだと言えるでしょう。

(image credit: Fuka Takagi, Yosuke A. Yamashiki, Natsuki Hosono)

(image credit: Miu Shimizu, Habitable Research Group, SGH Moriyama High School)

ところで、LHS 1140b は現在の中心星周りのハビタブルゾーンに位置してはいますが、実は過去の若い中心星(活動が激しい)のもとでは入射してくるエネルギー量が大きすぎて、いわゆる「暴走温室状態」にあったと予想されます。そうすると表面の水は全て蒸発し、光解離を経て宇宙空間に散逸してしまうため、表面に液体の水を残すことは困難となります。

ただし super-Earth の場合は、「マグマオーシャン」とよばれる表面がドロドロに溶けていた時代がかなり長く続いた可能性が指摘されており、もしこれが正しいならばマグマオーシャン中に長期間水を溶かし込んでおくことができたかもしれません。そうすれば、中心星の放射エネルギーが小さくなった頃にマグマオーシャンから水を取り出してあげることで、現在も適度な量の水を保持する環境が実現されている可能性があります。いずれにせよ、今後の詳細な観測によって水の存在の有無を調べることが重要です。

ちなみに、これまでに M 型矮星周りで見つかっている地球型惑星は、ほとんどが複数惑星系を成しています。LHS 1140 周りにも、今回発見された super-Earth 以外に、まだ見つけられていない他の小さな地球型惑星が複数存在している可能性は高いと考えられます。こちらも今後の追観測に期待しましょう。

LHS 1140 b に関する詳しい情報は以下のデータベースページをご覧ください。

http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/LHS_1140_b.html

(文責:佐々木貴教)

参考文献
Jason A. Dittmann et al., A temperate rocky super-Earth transiting a nearby cool star, Nature 544, 333-336.
http://www.nature.com/nature/journal/v544/n7650/full/nature22055.html

注1: MEarth は、アメリカ国立科学財団が設立した太陽系外惑星を探査するための天文台です。観測システムは口径 40cm の望遠鏡 8 台から構成され、自動で約 2000 個の恒星の変光を監視しています。(参考:Wikipedia

注2:HARPS は、ヨーロッパ南天天文台 (ESO) が2003年から運用している太陽系外惑星の観測装置です。チリのラ・シヤ天文台にある 3.6m 望遠鏡に設置された分光器を用いて観測が行われています。(参考:Wikipedia

ExoKyoto Stellar Screen で表現したLHS1140恒星系の位置

ExoKyoto Stellar Screen で表現したLHS1140恒星系の位置

LHS1140bは上記のように、岩石惑星で、大気をそれほどまとわず、ハビタブル・ゾーンの少し外側にある。ExoKyotoを用いて温度を推定すると、推定温度 230K となり、もし暴走温室状態を耐えてある程度の水が惑星表面にのこっていたとすると、海洋惑星ではなく雪玉惑星となっている可能性もあるだろう(山敷)

(image credit: Ryusuke Kuroki, Yosuke A. Yamashiki, Natsuki Hosono)

また、主星との距離が近いため、潮汐ロックされている可能性もある。その場合、昼半球は干上がり、夜半球は水(氷)が残っている可能性がある。

(image credit: Fuka Takagi, Yosuke A. Yamashiki, Natsuki Hosono)

LHS 1140星のハビタブル・ゾーンは以下の位置にあります。
Inner Boundary (the orbital distance at Venus’s Equivalent Radiation ) : 0.038 AU ( 5,619,613.2 km)
内側境界(金星相当放射を受ける軌道半径): 0.038天文単位( 5,619,613.2 km)
Earth Boundary (the orbital distance at Earth’s Equivalent Radiation) : 0.052AU ( 7,767,774.0 km)
地球境界(地球相当放射を受ける軌道半径): 0.052天文単位(7,767,774.0 km)
Outer Boundary (the orbital distance at Mars’s Equivalent Radiation) :0.079 AU ( 11,836,368.5 km)
外側境界(火星相当放射を受ける軌道半径): 0.079天文単位(11,836,368.5 km)
Snow Line (the orbital distance at Snow Line Equivalent Radiation) : 0.116 AU ( 17,417,734.8 km)
スノーライン(スノーライン(雪線)相当放射を受ける軌道半径): 0.116 天文単位(17,417,734.8 km)
Radiation at Planetary Boundary of LHS 1140 b : 481.60W/m2

LHS 1140 b 惑星境界での中心星からの放射 481.60 W/m2
(Habitable zone calculated based on SEAU(Solar Equivalent Astronomical Unit) around the LHS 1140 b)

 

(太陽系相当天文単位(SEAU) を用いたLHS 1140 のハビタブル・ゾーン)

Original Kopparapu Recent Venus for LHS 1140  distance : 0.042 AU
Kopparapu et al. 2013 (Originalな係数セット) による、現在の金星位置条件に対応する半径 : 0.042天文単位
Original Kopparapu Runaway Greenhouse for Star LHS 1140 distance : 0.056 AU
Kopparapu (Original) による、暴走温室限界半径 : 0.056 天文単位
Original Kopparapu Moist Greenhouse for Star LHS 1140 distance : 0.056AU
Kopparapu (Original) による、湿潤温室限界半径 : 0.056 天文単位
Original Kopparapu Outer Boundary for Maximum Greenhouse for Star LHS 1140 distance : 0.109AU
Kopparapu (Original) による、(火星相当惑星の)最大温室効果半径 : 0.109 天文単位
Original Kopparapu Outer Boundary for Early Mars for Star LHS 1140 distance : 0.113 AU 
Kopparapu (Original) による、太古の火星条件に相当する半径 : 0.113 天文単位

(Habitable zone calculated based on Kopparapu et al.(Original) around the star LHS 1140)

Kopparapu et al.2013 (ORIGINAL Coef) を用いたLHS 1140 のハビタブル・ゾーン


ExoKyoto Individual Screen で表示したLHS 1140 bとその想像図(雪玉惑星)

ジャーナル記事

1.) A temperate rocky super-Earth transiting a nearby cool star

2.) A Search for Exomoons and TTVs from LHS 1140b, a nearby super-Earth orbiting in the habitable-zone of an M dwarf

 

WEB記事

1.) Newly Discovered Exoplanet May be Best Candidate in Search for Signs of Life

2.) Welcome to LHS 1140b: A Super-Earth in the Habitable Zone

3.) Exoplanet LHS 1140b may be most habitable yet found

GJ 1214 b

[Imaginary Picture of GJ 1214 b, Credit: C. Hatsuoka SGH Moriyama High School]

[Imaginary Picture of GJ 1214 b, Credit: C. Hatsuoka SGH Moriyama High School]

GJ 1214 b は 2009 年に発見された系外惑星で、サブネプチューンサイズの天体です。岩石のみでは説明できない低密度な惑星であり、大気を持つことがわかっています。また、この大気についてトランジット観測による情報が得られている点が、大きな特徴です。

GJ 1214 b の大気は、透過光スペクトル(惑星の大気を通過したことで特定の波長の光だけ吸収された中心星の光の強さを、波長毎に観測したもの)が、一般的な組成(太陽組成)の大気では説明できないような“平坦”なものとなっています(図1参照)。このような平坦なスペクトルになる状況は、二つ考えられます。一つは、水蒸気のような重い大気である場合です。もう一つは、大気の上層に波長によらず中心星からの光を遮蔽するような“何か”が存在することです。Bean et al. (2010) が行った大気の観測の精度では、この二つの状況を見分けることはできていませんでした。

しかし、Kreidberg et al. (2014) によるより精度の高い観測によって、大気が水蒸気であった場合では説明できないような極めて平坦な透過スペクトルを持っていることが分かりました(図2参照)。GJ 1214 b の大気上層には“何か”があるのです!

では、この遮蔽物は何でしょうか? 今のところ、鉱物の雲か有機物のヘイズ(塵が集まった埃のようなもの)と考えられています。遠い惑星に浮かぶ雲、果たしてどのような姿をしているのでしょうか? 想像が膨らみます。

(文責:芝池諭人・大野和正)

GJ1214bについての詳しい情報は、以下のリンク
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/GJ_1214_bJP.html


図1. Bean et al. (2010) による GJ 1214 b 大気の透過光スペクトル。黒点が観測値で、オレンジ色、青色、緑色の点は、それぞれ、一般的な大気(太陽組成)、水蒸気100%、70%の水蒸気と30%の水素、の大気を仮定した時に得られる透過光スペクトルの推定値。オレンジ色の点は明らかに観測値に合っていないが、青色の点は合っているように見える。


図2. Kreidberg et al. (2014)による GJ 1214 b 大気の透過光スペクトル。黒点が観測値で、図1よりも精度が上がっていることがわかる。緑色、青色、オレンジ色の点は、それぞれ、メタン100%、水蒸気100%、二酸化炭素100%、の大気を仮定した時に得られる透過光スペクトルの推定値。図1では合っているように見えた水蒸気100%の点も、この観測の精度では観測値に合っていない。

参考文献
Bean et al. (2010)
Jacob L. Bean, Eliza Miller-Ricci Kempton & Derek Homeier, A ground-based transmission spectrum of the super-Earth exoplanet GJ 1214b, Nature 468, 669-672.
http://ads.nao.ac.jp/abs/2010Natur.468..669B

Kreidberg et al. (2014)
Laura Kreidberg, Jacob L. Bean, Jean-Michel Désert, Björn Benneke, Drake Deming, Kevin B. Stevenson, Sara Seager, Zachory Berta-Thompson, Andreas Seifahrt & Derek Homeier, Clouds in the atmosphere of the super-Earth exoplanet GJ 1214b, Nature 505, 69-72
http://ads.nao.ac.jp/abs/2014Natur.505…69K

Kepler-560 b

Kepler-560 bは、白鳥座に位置し、地球から287光年離れたM型星 Kepler 560 の周りを周回するスーパーアースサイズの太陽系外惑星で、ハビタブルな惑星である可能性が議論されている惑星の一つで、2016年5月にNASAが発表した1284個のKepler惑星リストの中でハビタブルゾーンに位置する9個の惑星の一つに数えられています。


(Kepler-560 bの位置 ExoKyoto Stellar Window を利用 Zoom Level 3)
Kepler 560 はわずか0.34太陽質量のM型星(NASA区分ではK型星)で、その半径は推定0.33太陽半径であり、この星のハビタブル・ゾーンはずっと内側に位置すると考えられています。
この星のハビタブル・ゾーンは太陽系相当天文単位(SEAU)によると、
金星相当軌道 0.090 天文単位
地球相当軌道 0.125天文単位
火星相当軌道0.190 天文単位

Kopparapu et al.2013によると
内側境界Recent Venus 0.102 天文単位
地球サイズ惑星の暴走温室限界 0.129 天文単位
外側境界最大温室限界0.251 天文単位

Kepler-560 bの平均公転軌道半径は0.10 AU (1428万キロ)ですので、SEAUによるとハビタブル・ゾーン、Kopparapu et al.によると金星相当より内側で、ハビタブル・ゾーンから外れると考えられます。
Kepler 560 b 惑星境界での中心星からの放射は2343 W/m2なので、地球(1367 W/m2)より金星(2613 W/m2)に近いと言えます。
この星のアルベドを0.3と仮定した際の黒体温度は291Kとなり、地球(255 K)と比較してずいぶん暑くなる可能性があります。そのため、この星では、海が暴走温室効果により完全に蒸発しているか、あるいは海が存在したとしても、非常に海水温が高く、いわゆる植物プランクトンの増殖による赤潮が大発生しているかもしれません。想像図では、海が蒸発せず、赤いプランクトンに覆われ、さらに硫酸塩還元菌によって硫化水素が大量発生し海水がピンク色となった、いわゆる「海洋無酸素事象 OAE 」の海をイメージしました。

Kepler-560bの想像図 (Image Credit: Shione Fujita, Habitable Research Group SGH Moriyama High School )

Kepler-560bの想像図 (Image Credit: Ryusuke Kuroki, Natsuki Hosono and Yosuke Yamashiki, GSAIS Kyoto University )

ただし、公転周期がわずか18.5日であるため、ケプラーが発見したハビタブルなスーパーアースの中では地上観測の対象となりうる可能性があり、主星も視等級12.3等星であるため、観測可能といえます。

Kepler-560 b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-560_b.html

(文責 山敷庸亮)

1SWASP J1407b

1SWASP J1407 bの想像図 (Image Credit: Shione Fujita, Habitable Research Group SGH Moriyama High School )

1SWASP J1407 b は、太陽系から 433.8 光年( パーセク)離れた恒星1SWASP J1407 を周回する系外惑星で 2012 年に公開されました。恒星 1SWASP J1407 は視等級 12.4, 絶対等級 6.8 です。
この恒星は太陽の 0.9 倍の質量で、 半径は太陽の1.0 倍であり 表面温度は 4400 で、スペクトル型は K5です。この恒星の惑星系で 1SWASP J1407 b は、恒星 1SWASP J1407 のまわりを 公転周期3725.0 日で、 軌道長半径 3.90 天文単位 ( 583431695.7 km)で公転しています。

1SWASP J1407 b (J1407 b) は、ケンタウルス座に位置し、地球から434光年離れたK 型星 1SWASP J1407 (J1407) の周りを周回する20木星質量以上のスーパージュピターサイズ(別説によると80木星質量以上の褐色矮星サイズ)の太陽系外惑星です。主星のJ1407で2007年に非常に複雑な「食」が観測され、食の原因は周囲を巨大で複雑なリングを持つ惑星「1SWASP J1407b」が回っているためと考えられ、J1407 bは太陽系外惑星で最初に輪が発見された惑星・あるいは系外土星として知られています。

(1SWASP J1407 b の位置 ExoKyoto Stellar Window を利用 Zoom Level 3)
1SWASP J1407 は0.9 太陽質量のK型星で(半径は推定0.99 太陽半径)、この星のハビタブル・ゾーンは太陽系よりやや内側に位置しています。
この星のハビタブル・ゾーンは太陽系相当天文単位(SEAU)によると、
金星相当軌道 0.415 天文単位
地球相当軌道 0.574 天文単位
火星相当軌道 0.875 天文単位
Kopparapu et al.2013によると
内側境界Recent Venus 0.460 天文単位
地球サイズ惑星の暴走温室限界 0.582 天文単位
外側境界最大温室限界1.084 天文単位

J1407 b の平均公転軌道半径は3.9 AU ですので、ハビタブル・ゾーンから外れており、木星のような環境に位置すると考えられていましたが、スティーヴン・リーデェル 理化学研究所(AICS) 特別研究員 らによると、離心率が0.65で、最も接近する時は中心星から2AUまで近づくようです。
この星のリングシステムは、その半径が1AUにも及ぶ巨大なもので、さながら主星J1407の周りを、巨大な褐色矮星J1407 bが惑星(衛星)といくつものリング(アステロイド・ベルト)を伴って自転しているようにも考えられます。また、スティーヴン・リーデェル氏らによると、このリングは公転方向と反対に回転していないと安定して存在しないことが解明されており(1)、その意味でも<不思議>に満ちた星であるといえます。

1SWASP J1407 bの想像図 (Image Credit: Haruka Inagaki, Habitable Research Group SGH Moriyama High School )

公転周期は11年(別説によると10.2年) であり、主星は視等級12.4等星であるため、地上観測可能な天体であり、次にトランジットが起こるであろう2018年に詳しくその<リング>の正体が解明されることが期待されている。

1SWASP J1407 b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/1SWASP_J1407_b.html

(文責 山敷庸亮)
(1)理化学研究所(理研)計算科学研究機構粒子系シミュレータ研究チームのステーヴン・リーデェル国際特別研究員とライデン天文台のマシュー・ケンワージー准教授の国際共同研究チームは、初めてリングを持つ系外惑星[1]として発見された「J1407b」のリングが、その巨大さにも関わらず主星[1]「J1407」の潮汐力[2]によって破壊されずに存在しているメカニズムをシミュレーションにより解明しました。
今回、国際共同研究チームは、コンピュータシミュレーションでJ1407bのリングが破壊されるかを調べました。その結果、J1407bのリングの回転が公転と逆向きだと、リングが10万年以上にわたって存在できることを突き止めました。一方、土星のリングと同じように公転と同じ向きの回転だと、数十年でリングはかなり小さくなってしまうことが分かりました。本研究によって、系外惑星のリングには、私たちが想像もしていなかった“巨大かつ回転が公転と逆向き”というものがあることが明らかになりました。(理化学研究所のプレスリリースより)
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20161102_4/