カテゴリー: 系外惑星の紹介

51 Pegasi b

(Imaginary Picture of 51 Pegasi b as original “Hot Jupiter” Credit:Yosuke Yamashiki, Ryusuke Kuroki & Natsuki Hosono)

51 Peg b は、太陽系から 47.9 光年( パーセク)離れた恒星51 Peg を周回する系外惑星で 1995 年に公開されました。恒星 51 Peg は視等級 5.5, 絶対等級 4.7 です。この恒星は太陽の 1.1 倍の質量で、 半径は太陽の1.3 倍であり 表面温度は 5793 で、スペクトル型は G2 IVです。この恒星の惑星系で 51 Peg b は、恒星 51 Peg のまわりを 公転周期4.2 日で、 軌道長半径 0.05 天文単位 ( 7779089.3 km)で公転しています。

1995 年に人類史上初めて、スイスのミシェル・マイヨール(Michel Mayor)らにより発見された最初の太陽系外惑星です。マイヨールとディディエル・クゥエロツらは当時最新鋭の高分散分光器ELODIEを備えたフランスのオート・プロヴァンス天文台(Observatoire de Haute-Provence: OHP)にて、視線速度法によりペガスス座51番星を観測し、木星質量の惑星が太陽系の水星軌道の内側を自転周期 4.2 日で公転していることを Nature 誌に発表しました (i)。この功績により、両氏は2019年ノーベル物理学賞を受賞しました。

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(Hot Jupiter 51 Pegasi b orbiting around its host star 51 Pegasi, Credit:Yosuke Yamashiki, Ryusuke Kuroki & Natsuki Hosono)

ペガサスに騎乗したギリシャ神話の英雄ベレロポンにちなんでベレロフォン(Bellerophon)と呼ばれることもあるこの系外惑星(51 Pegasi b)は、その灼熱の推定環境にちなんでホットジュピター(灼熱の木星)と分類されました。その後、視線速度法により、数々のホットジュピターが発見されています。例えば同じペガサス座のオサイリス(Osiris: HD 209458 b)などは公転周期がわずか 3.5 日で主星のまわりを公転し、ハッブル望遠鏡により 2001 年に大気中に酸素と炭素が含まれていることが観測された初めての系外惑星です。

太陽系の形成過程の標準モデルでは、ガス惑星は中心星から遠くはなれた場所(~5AU)で形成されるとされていたため、このような中心星近傍(<0.05AU)に存在する巨大ガス惑星の形成過程は多くの議論を呼びました。その後、恒星から遠く離れて形成された巨大ガス惑星が軌道変遷により水星軌道の内側にまで移動してきた可能性が最も高いとされています。

なお、ミシェル・マイヨール氏は第 31 回京都賞を受賞され、同年にはノーベル物理学賞候補にもノミネートされました。そして、2019年には宇宙論のJames Peebles, そして共同発見者のディディエル・クゥエロツ(Didier Queloz)とともにノーベル物理学賞を受賞しました。

(i) Michel Mayor & Didier Queloz. 1995. A Jupiter-mass companion to a solar-type star. Nature 378(23): 355-359.

マイヨールとクゥエロツは、高分解能分光計(高分散分光器)ELODIEを備えたフランスのオート・プロヴァンス天文台にてペガスス座51番星(51 Pegasi)の視線速度を測定し、木星質量の惑星が太陽系の水星軌道の内側(0.05AU)を公転周期 4.2 日で公転していることを発見し、また系外惑星(51Pegasi b)が、小さな赤色矮星からガスが流れ出た残骸であるという可能性と同時に、元々恒星から遠く離れて(~5AU)形成された木星質量のガス惑星が内側に移動してきたと考えられる可能性を示しています。特に恒星 51 Pegasi の推定寿命が G 型星の寿命に近い 100 億年と推定されたこともあり、惑星軌道の変遷によりガス惑星が内側に移動した可能性があることが発表後議論されました。また、この視線速度の変化が大質量星のパルサーに由来するものではないことを明らかにし、系外惑星発見の揺るぎないデータと論述を示しました。またフィレンツェにおける研究発表を通じて、ハーバード・スミソニアン天体物理センターを含む他の天文グループにより視線速度変化の周期が 4.2 日であるという独立調査がなされ、その信頼性が確認されました。

(文責:山敷庸亮)

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(ExoKyoto Stellar Window を用いて表示した 51 Peg b の位置)

51 Pegasi b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/51_Peg_b.html

Kepler-452b

(Kepler-452 b Ocean Planet Credit: Chise Hatsuoka, Habitable Research Unit SGH Moriyama High School)

Kepler-452b とは白鳥座に位置する、地球から1,400光年離れた G 型主系列星 Kepler-452 を周回している太陽系外惑星であり、太陽と似た恒星の周りのハビタブルゾーンで初めて見つかった岩石惑星であると考えられている。年齢は約 60 億年で主星である Kepler-452 が太陽に似ており、公転周期が約 384 日であるなど地球と類似点が多いため、しばしば「地球のいとこ」という表現が用いられる。

(Kepler-452 b Credit: Fuka Takagi and Yosuke Yamashiki, generated using Planet Map Generator and OpenGL)

Kepler452b sub crowd
(Credit: Shione Fujita & SGH Moriyama High School)

Weiss and Marcy (2014) の手法によって ExoKyoto を用いて推定した質量は地球の約 4 倍であり、いわゆる「スーパーアース」とよばれるタイプの惑星である。一方で、半径は地球の約 1.6 倍であることから、平均密度が小さく分厚い大気に覆われている惑星だと考えられる。大きな重力のもとでは大量の水の獲得が容易であり、また獲得した水の散逸は困難である、との予想から、我々の想像図においては、水深 30km~50km 深い海がほぼ全体を占めているオーシャンプラネットを想定した。そのような条件において陸地は大陸でなくハワイのような列島が点々と存在していることが予想される。

ただし、主星が太陽よりも 15 億年ほど年を取っているため、太陽よりも大きなエネルギーを放射していることが想定され、Kepler-452b も地球よりも大きなエネルギーを受け取っていると考えられる。そのため、(暴走)温室効果の影響により、表面の水は存在できなくなっている可能性もある。また、Kepler-452b 自体も地球よりも 15 億年ほど年上の惑星であると考えられるため、惑星の表層環境を詳しく調べることができれば、地球が今後迎えるであろう環境変動についての情報を得ることができるかもしれない。

いずれにせよ、今後の詳細な追観測により、惑星表層環境や海の有無を検証することが重要である。

(文責:藤田汐音・佐々木貴教)

ExoKyoto Stellar Screen で表現したKepler-452恒星系の位置Kepler452b_Stellar

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Kepler452b_Z1

Kepler-452b に関する詳しい情報は以下のデータベースページをご覧ください。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-452_b.html

ジャーナル記事

1.) Discovery and Validation of Kepler-452b: A 1.6-R⊕ Super Earth Exoplanet in the Habitable Zone of a G2 Star

2.) Climate and Habitability of Kepler 452b Simulated with a Fully Coupled Atmosphere–Ocean General Circulation Model

3.) Quantitative estimates of the surface habitability of Kepler-452b

 

WEB記事

1.) Kepler-452b: Earth’s Bigger, Older Cousin — Briefing Materials

2.) One Of The Most Earth-Like Worlds We’ve Found May Not Actually Exist

3.) Kepler 452 b: Inhabitable ‘Earth 2.0’ could be statistical mirage, study shows

Kepler-186f

(クレジット:Natsuki Shirako & SGH Moriyama High School)

Kepler-186f は、地球から 492 光年離れた、白鳥座に位置する M 型主系列星 Kepler-186 の周りを回る系外惑星です。公転周期は約 130 日で、太陽系外のハビタブルゾーンにおいて、初めて発見された地球に近いサイズの惑星であり、地球に最も近い惑星です。また、Kepler-186fは地球から約490光年離れた外界系の五つの惑星の一つであり、新しく発見された太陽系外惑星は、太陽から約3250万マイル(5240万km)の周りを周回している。赤い矮星を旋回するには約130日間かかります。

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(クレジット:Saaya Shimozaki & SGH Moriyama High School)

中心星の Kepler-186 は、赤色矮星で赤い光を放っていて、質量は 0.478 太陽質量、表面温度は太陽より 2,000 度ほど低い 3,788 K と見積もられています。そのため、その周りを回る Kepler-186f に届く光のエネルギーは弱く、赤色光および赤外線成分が多いので、地球上の植物が光合成に用いる緑色の葉緑素クロロフィルaではエネルギー吸収に適さないと考えられています。

もし、Kepler-186f 上に生命が発生したとすると、波長の長い赤色光をより吸収しやすい、黒色の光合成色素を有する植物が生息しているかもしれません。

kepler186f 地表
(クレジット:Saaya Shimozaki & SGH Moriyama High School)

Kepler-186f は中心星との距離が 0.36 AU(地球-太陽間の距離 = 1AU)と近いため、中心星の重力から生じる潮汐力によって、自転と公転の周期が同期している可能性があります。その場合、惑星は中心星に対して常に同じ面を向けて回ることになるため、中心星の光を受けている面は水分が干上がり、一方で逆側の面は氷におおわれることになるはずです。すると、ハビタブルであるのは、その中間地域のみになることが想定されます。

また、温度の高いところから低いところへ風が吹くため、地表では昼側から夜側に向かって常に強風が一定方向に吹いていると考えられ、植物は常に同じ方向にたなびいていることになるかもしれません。

ちなみに、この惑星は「Earth 2.0」とよばれることがあります。地球と同じサイズのハビタブルプラネットなのですが、中心星のタイプが太陽とは異なるため、「ヴァージョン違い」の地球型惑星、として捉えるのがよいということなのでしょう。

(文責:下崎紗綾・佐々木貴教)

Kepler186f

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(ExoKyoto Stellar Window 上に表示した Kepler-186f)

Kepler-186f についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-186_f.html

ジャーナル記事

1.) An Earth-Sized Planet in the Habitable Zone of a Cool Star

2.) FORMATION, TIDAL EVOLUTION AND HABITABILITY OF THE KEPLER-186 SYSTEM

 

WEB記事

1.) Kepler-186f, the First Earth-size Planet in the Habitable Zone

2.) 5 Things to Know About Alien Planet Kepler-186f, ‘Earth’s Cousin’

3.) Kepler 186f

Kepler-16b

Kepler-16b は、白鳥座に位置する K 型星の Kepler-16A と M 型星の Kepler-16B の連星 Kepler-16(AB) の周りを回っており、恒星同士の連星を公転している「周連星惑星」として初めて発見された天体です。そのため、Kepler-16b の地表からは “太陽” が2つ見えることになります。また公転軌道は、明るい方の恒星である Kepler-16A のハビタブルゾーンの外側の縁あたりに位置しています。

Kepler-16b は、半径が地球の 8.5 倍、質量が地球の 105 倍と、サイズとしては太陽系の土星に近く、ガス惑星であると考えられます。Kepler-16b 上には地球のような生命体がいるとは考えにくいですが、仮にその周りに地球サイズの衛星が存在すると仮定すると、十分な大気を持てば生命体が発生する可能性はあると期待されます。

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(クレジット:Shione Fujita & SGH Moriyama High School)

この仮想衛星から空を見上げると、Kepler-16b(土星のようなリング惑星)と、遠くに輝く2つの太陽(Kepler-16(AB))が見えることでしょう。太陽系には存在しない「ハビタブルムーン」上に生命が発生し、彼らは地球とは全く異なる風景を眺めているかもしれない、と考えるとなかなか興味深いものがありますね。

ちなみに、アメリカで行われた研究会において初めて Kepler-16b が発表されたとき、会場はスタンディングオベーションに包まれました。映画「スター・ウォーズ」に登場する、ルーク・スカイウォーカーの故郷タトゥイーン(Tatooine)が、ついに発見された!ということで、大盛り上がりになったのです。「SF に現実が追いついた」そんな素敵な瞬間でした。

周連星惑星はその後も次々と発見されており、単独星周りとは異なる惑星形成プロセスの可能性や、より複雑なハビタブルゾーンの計算など、様々な研究が精力的に行われているところです。宇宙には単独星よりも二重以上の連星の方が多く存在していると考えられており、周連星惑星の重要性は非常に大きいといえるでしょう。

(文責:藤田汐音・佐々木貴教)

Kepler16b
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(ExoKyoto Stellar Window 上での Kepler-16b)

Kepler-16b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/Kepler-16_(AB)_b.html

HD 209458 b

(Image Credit: Shione Fujita, Habitable Research Group, SGH Moriyama High School)

HD 209458 b(別名オシリス)は 1999 年に世界で初めてトランジット法による観測がなされた系外惑星です。ペガスス座V376 星を周回しており、古代エジプト神話に出てくる神オシリスにちなんで名付けられました。軌道が恒星から非常に近い「ホット・ジュピター」の一つで、表面温度が 1000℃ を超えていると考えられています。また、恒星の重力により常に一つの面を恒星に向けています。

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(Image Credit: Ryusuke Kuroki, Yosuke Yamashiki & Natsuki Hosono)

HD 209458 b は初めて大気の存在が確認された系外惑星でもあります。惑星の大気を通過した恒星からの光を波長ごとに詳しく調べることで、惑星の大気を構成する分子の種類がわかります。それによると、HD 209458 b の大気の下層部にはナトリウム、上層部には水素や炭素を含む分子があることがわかりました。また、高温のため激しく放出される大気が彗星のように尾を引いていたり、鉱物でできた雲が浮かんでいたりと、HD 209458 b は私たちのよく知っている太陽系の惑星とは全く異なる特徴を持っていると考えられています。

このような系外惑星大気の特徴は、今の観測技術では「惑星の大気を通過した恒星からの光」を観測しなければわかりません。一度にたくさんの恒星を観測し自動的に解析できる点も考えれば、「トランジット法」が非常に強力な観測手法であることがわかります。

なお、HD 209458 b によるトランジットは、直径30cm程度の比較的小さな望遠鏡でも観測することができます。自分で観測したデータを解析し、実際に自分の手で系外惑星の存在を示す光度曲線を得ると、「系外惑星」という遠い宇宙の話が急に身近に感じられるでしょう。ぜひ皆さんも一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

(文責:芝池諭人)

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(ExoKyoto Stellar Window を用いた HD 209458 b の天球上の位置)

HD 209458 b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/HD_209458_b.html

HD 149026 b

(Imaginary Picture of HD149026b, credit Yosuke Yamashiki, Ryusuke Kuroki & Netsuki Hosono)

HD 149026 b は、ヘルクレス座に位置する HD 149026 の周りを回る系外惑星です。2005 年に、佐藤文衛らによって、すばる望遠鏡とケック望遠鏡の視線速度法を用いた観測によって発見されました。

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(クレジット:NASA/JPL-Caltech)

HD 149026 b は、トランジットをしていたためにその後の観測で半径を測ることができました。その結果、質量が木星の 0.36 倍、半径が木星の 0.725 倍で、大きさの割にはかなり高密度(1.6 g/cm3;土星の2倍以上の密度)な惑星であることがわかったのです。そのため、地球の 67 倍という大質量の中心核を持った、高温の巨大ガス惑星だと推測されています。

実は、一般的な惑星形成理論のもとでは、これほど大きな中心核を持つガス惑星を作るのは困難だと考えられています。というのも、惑星形成段階において天体が地球の 10 倍程度まで大きくなると、周囲の原始惑星系円盤ガスを重力的に捕獲し、一気にガス惑星まで成長してしまうと考えられているためです。一度ガス惑星まで成長してしまうと、その後に大量の固体物質をその内側に取り込むことは困難であると思われており、なぜガス惑星になってしまう前に大質量の中心核を形成することができたのか、大きな謎となっています。HD 149026 b がどのようにして形成されたのかについては、現在も活発な議論が進められているところです。

ちなみに、2015 年に国際天文学連合によって、いつくかの系外惑星系について名前の公募と投票が行われました。投票の結果、中心星 HD 149026 には「Ogma」、惑星 HD 149026 b には「Smertrios」という名前が付けられることになりました。

(文責:佐々木貴教)

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HD149026_Z1

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(ExoKyoto Stellar Windowを用いて天球上に表示したHD149026)

HD 149026 b についての詳しい情報はこちら。
http://www.exoplanetkyoto.org/exohtml/HD_149026_b.html